対談企画「坂口智隆のやるかやらんか」…第1回はオリックス岸田護監督が登場
オリックスの苦しい時代をともに支え、ファンから愛された岸田護監督と坂口智隆氏が、監督とインタビュアーという立場で顔を合わせることになった。気心の知れた球団OBだからこそ引き出せた、岸田監督の素顔と野球への深い愛情や現役当時の思い出話など、2人の特別な絆と熱い本音が詰まった貴重な対談をお届けする。全2回の前編。
坂口智隆氏
岸田護監督
坂口氏
いや、それはちゃうでしょ(笑)。今日はインタビュアーとして色々、聞かせてもらいますのでよろしくお願いします
――2005年のドラフト同期だった平野佳寿投手が現役引退を発表。チームが低迷していた時代を支えてきたチームメートは全員が引退した。
坂口氏
岸田監督
うん。やっぱり寂しさはありますよ。寂しさと時代が変わるって言いますか、常に変わってるんですけど。でもそれって、当たり前のことで。それを見てきているわけですよ。(現役生活は)いつか絶対に終わるんで。ゴールのない世界なんで、結局は。最後まで長くやった人っていうのは、ある程度自分で見切り、と言いますかね、ゴールを決めないといけない。でもゴールはないんですよ、実はね。だからどこかでケジメをつけないといけない。
やればやるほど深みにハマっていくんですよ。ハマっていけばいくほどゴールはない。同じものにこう、どんどんハマっていって。みんな最後の方は2軍でやることも多くなっていくわけですよ。その時に若い子たちがやっているの見ると、頑張ってるなとか。上(1軍)に行きそうな時は、アドバイスを求められたりね。アドバイスを求められて、答えるようになっていくと、その時点でもう半分、プレーヤーではないって感じていくんですよ。どうしてもね
坂口氏
あー、分かります。毎年、レギュラーで全試合に出ることが目標やったのに、徐々に代打やベンチスタートに納得するようになる。そういう自分が嫌にもなるし、2軍で同じポジションの若い子が活躍した時に、応援してる自分をみて『これ違うよな』と思いましたもん。現役中はライバルやし、アドバイスを求められても、心の中では教えたくない時ありましたもんね
坂口氏は引退試合の時間を勘違い?「高速道路の途中で気づいた」
――岸田監督は2019年に現役を引退。同年の9月29日のシーズン最終戦で引退試合を行った。当時、ヤクルトに在籍していた坂口氏は、先輩の最後の雄姿を見るために京セラドームに向かったのだが……。
岸田監督
坂口氏
いやいや、行きましたから! でもね、僕、引退試合がナイターやと思ってて。そのつもりで車で向かっていたら、高速道路の途中でデーゲームってことに気づいたんですよ。ほんまに間に合わへん思って。焦りましたよ。先に球場に着いてるメンバーから『マモさん何回から投げますよ!』って電話きて。え!? え!?ってなって。球場のスクリーンで抜かれた時は『最初からいてますよ』って顔しながら(笑)。間に合ってるし全然、セーフ。もうピッチング練習から見てましたもんね
岸田監督
坂口氏
でも、あれ。最後に投げ続けたカットボール、めっちゃ良かったです!
岸田監督
あれ真っすぐや! 140キロ出なかった真っすぐやねん
坂口氏
真っすぐ? あ、そうなんや(笑)。でも、最後は練習してたんですか?
岸田監督
引退したシーズンは、自主トレからめっちゃ頑張ってたけど、春季キャンプの第2クールぐらいかな。腰が痛くて起き上がれんくて。歩けなくなって、そこからリハビリに入った。年齢も38歳だったから、そこからもう(痛み止めの)注射をガンガン打って。結局、夏ぐらいまで打ち続けながらね。
その時にはやっぱり若い子らもいっぱい出てきてたし、それこそ由伸(山本・現ドジャース)とかね。他にもええピッチャーがいっぱい出てきてたから、ああもうこれ引き際やな、みたいなのは夏ぐらいにはあったかな。そこまでずっと2軍で、ほぼリハビリをしてたから。9月中旬ぐらいかな、球団から呼ばれて。福良(淳一)GMに『どうする?』みたいな
現役引退の決断「自分で決められるのは幸せなこと」
坂口氏
やっぱり、みんな一緒なんや。でも、『どうする?』が野球選手にとってはね……
岸田監督
そうそう。それっていわゆる引退っていう名の戦力外みたいなもんやから。自分で決められる人は少ないし。だから、すんなりだね。ほんまにすんなり引退しますって。長くやって、自分で決められるのは幸せなことですよ
坂口氏
でも、引退試合はしっかり投げられてましたもんね(笑)
岸田監督
あれ最後の最後にクリニックを紹介してもらってね。注射も効かないし、最後に先生が『神経を焼こうか』ってなって。神経を焼き切る手術をやってもらったら、一撃で治って。いけるやん。すごいなって。でも『先生、もうちょい早く! もう僕、引退なんですよ』って(笑)。でも、そんなもんよね、それも運命かなって
坂口氏
運命か……。運命と言えばですよ、あの2014年の試合のこと覚えてます?
後編では岸田監督にとって現役生活でもっともリーグ優勝に近づいた2014年、ソフトバンクとの「10・2決戦」の秘話、坂口氏のオリックス退団の裏話などをお届けする。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)