「野球漬けの日々」から大逆転の東大合格は可能? 元監督の塾長が語る必要条件
東大合格には「最低7000時間の勉強が必要」
東大野球部元監督にして、現在は部活と勉強の両立を目指す学習塾「Ai西武学院」の塾長を務める浜田一志氏に文武両道の実践法を聞くシリーズ。今回は中学で勉強していなくても人気漫画「ドラゴン桜」のように、高校での“大逆転劇”は可能なのか聞いた。文武両道のエキスパートである浜田氏によれば、可能性はゼロではないが、必要な条件があるという。
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中学で野球ばかりしていて、まったく勉強ができなかったけど、高校で猛勉強して東大に入る……。そんな漫画やドラマのような話は実際にはありません(笑)。どんなに能力があっても、中学生の時点で勉強する習慣がついていなければ、能力を放棄しているのと同じですから。
東大に合格するためには、高校の学習範囲に関して最低7000時間の勉強が必要になります。(授業時間も含む)。3年間でそれだけやろうとすれば、1日8時間、毎日勉強して、ようやく到達する。暴走族から弁護士になったような人もいますから、絶対に無理とは言い切れませんが、アメリカまで泳いで行くことは不可能ではない、というレベルです(笑)。半ば洗脳のような指導をしなければならないですし、本人の相当な覚悟と、勉強するための体力も必要になります。
加えて“地頭”が良くないと難しいでしょうね。地頭とはその人が生まれ持った頭の良さのことです。私の感覚では200人に1人くらいの割合で、地頭の良さを生かし切れていない子がいますから、そういう子であれば可能性があるかもしれません。
地頭が良い子は話しかければ分かります。「飲み物は何が好きですか?」と聞いたら、ダメな子は「お茶もいいけど、喉が渇いていたらコーラがいいし、大人になったらお酒も飲みたい」といったように、好きな飲み物をひとつ答えればいいという質問者の意図を理解できない。地頭の良い子は「お茶」と答える。会話が成り立つんです。
地頭の良さというのは要するに、相手が何を知りたがっているのかを的確に理解し、優先順位をつけて答えを絞り込む能力のことです。地頭が良いと試験問題を解く時も、出題者がどういう答えを望んでいるのかを考えて、答えを絞り込んでいくことができる。だから必然的に成績も良くなるわけです。
地頭の良さは野球でも生かされます。1打席目に凡退しても、対戦投手の打てる球、打てない球を取捨選択して絞り込んでいくので、2打席目以降に結果を出したりするんです。練習ではイマイチなのに、試合になると結果を出すような子も地頭が良いタイプです。練習では実戦どうすれば打てるのか考えて試行錯誤する。戦略を立てて試合に臨むので、いざ本番になると結果が出せるというわけです。
○浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾Ai西武学院を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。2015年の東京六大学春季リーグで東大の連敗を94で止め、2017年秋には30季ぶり勝ち点を挙げた。
(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)
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