杉谷拳士の“野球道”は「間違っていなかった」 最後の打席でも守った14年間の“信念”

チームメートと侍ジャパンのメンバーから胴上げされる日本ハム・杉谷拳士【写真:中戸川知世】
チームメートと侍ジャパンのメンバーから胴上げされる日本ハム・杉谷拳士【写真:中戸川知世】

チームメート+侍ジャパン選手から胴上げ…あり得ない結末

 日本ハムの杉谷拳士内野手が今季限りで現役を退く。5日に東京ドームで行われた侍ジャパンとの強化試合で現役最後の出場を果たし、チームメートだけではなく、日本代表の選手からも総出で胴上げされるというド派手な幕引きを見せた。この試合、杉谷は7回1死から代打出場。最後に守った“こだわり”があった。マウンドには中日の2年目、高橋宏斗投手。杉谷は左打席に立ち、右飛に終わった。

「最後、右(打席)に立とうかなとも思ったのですが、プロに入った時に、スイッチヒッターで最後まで駆け抜けたいと思いました。だから最後まで、右投手なら左打席に入ろうと……」

 杉谷は帝京高時代に両打ちに転向し、日本ハムの入団テストに始まるプロ生活を駆け抜けた。ただ近年は打撃成績を伸ばせず、2021年の後半には相手投手との対戦成績を見ながら、右投手と当たってもあえて右打席に入る試みをしていた。ただ最後の打席は、初心に帰ったのだ。

 あのまま順調に行けば……と思うことがある。杉谷は2015年、84試合に出場し打率.295。故障した陽岱鋼の穴を埋め、レギュラー一歩手前まで駆け上がった。この年の途中、打席を見ていて気付いたことがあった。左打席専用のバットを使うのをやめたのだ。

 杉谷はずっと、2本のバットが相棒だった。右打席は白木、左打席はオレンジのバットを使っていた。理由は単純で、右打席用のバットを「作った」左打席では振り切れなかったのだ。オレンジのバットは白木のものより、少しだけ軽く形も違った。

 バットを“捨てた”理由を聞くと杉谷は「もう、いらないのかなって思うようになったんです。なんか邪魔になったというか……」。スイッチ打法は完成に近づき、口調は自信にあふれていた。

打席で聞こえた骨が折れる音…「何でも屋」の野球人生にも感謝

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