「今年で終わるつもりはないですから」2軍で投げ続けた金子千尋…背中で伝えた“最後の1年”
オリックス、日本ハムで通算130勝の金子千尋が、2軍で過ごした1年
昨年12月23日、日本ハムの金子千尋投手が現役引退を発表した。10月にチームから来季の戦力構想に入っていないと通告され、コーチ就任を要請されたのを固辞して現役続行にこだわった。2005年にオリックスに入団して以来、プロ通算130勝。先発投手として最高の栄誉となる沢村賞にも輝いた大投手は昨季、2軍で投げ続けた。
14試合に投げ7勝3敗、防御率2.49。76イニングで奪三振53、四死球13。金子が最後のシーズンに2軍で残した数字だ。勝ち星はリーグ2位タイ。若く、粗削りな選手が修行する2軍で、これほど完成された投球をできる投手は他にいなかった。シーズン前半、金子の登板日にはそれとわかる、各球団の編成担当者がネット裏に並んでいた。トレード期限が過ぎると、その姿も減った。
8月25日のDeNA戦、先発して6回3失点(自責2)、負け投手となった試合後に話を聞いた。初回先頭の粟飯原に右翼へ本塁打を浴び失点。2回からはうまく打たせてアウトを重ねた。その後6回には先頭からの長短打でピンチを招いたところに、味方の失策もあり2失点という展開だった。
ここまで1軍から呼ばれない状況で、本人は何を考えているのだろうか。現役生活の最後を、2軍のグラウンドで過ごした投手の姿が何人も頭をよぎった。ただ、金子はこちらから去就をどう考えているのか聞く前に口にした。キッパリと。
「相手に嫌な印象を与えるピッチングをしたい。今年で終わるつもりはないですから」