現代は「不器用な子が多い」 オリ元トレーナーが危惧する“運動能力の低下”

福岡で「キラ整骨院」を経営する吉良俊則さん【写真:本人提供】
福岡で「キラ整骨院」を経営する吉良俊則さん【写真:本人提供】

2015年までオリックスのトレーナー…吉良俊則氏は福岡で整骨院を経営

 野球をする少年少女たちに必要なトレーニングとは? 近年、子どもたちの運動能力は低下の一途をたどっている。元プロ野球選手で2015年までオリックスのトレーナーを務め、現在は福岡で「キラ整骨院」を経営する吉良俊則さんは「遊びの中で“運動”ができなくなってきたことが原因の一つ」と指摘する。

 昨今の野球界は「走る、打つ、守る」と基本的な動きだけでなく、新感覚のスポーツ「パルクール」やリズム運動など身体能力を上げるトレーニングに注目が集まっている。プロ野球選手もオフの自主トレではトレーナーを帯同させ、最先端の“動き”を取り入れている様子が毎年のように伝えられている。

 一見、特別な練習を行っているようにみえるが、吉良氏は「ほとんどのトレーニングが、昔は当たり前のようにやっていた遊びに含まれているもの」と説明する。公園に当たり前のようにあった遊具、不安定な崖や高い塀の上を歩くなど「ちょっと危険な遊び」を行う中で体を自在に動かしていたという。

「パルクールやリズム運動、ウォーターバッグなどは体幹や安定性を鍛えるトレーニングです。昔は遊ぶことによって、自然とその部分が養えていた。今は遊ぶ場所もなくなり、少しでも危険と判断されると禁止になる。今は遊べなくなったものをトレーニングで補っている状況です」

 2016年に整骨院を開業し、これまで多くの子どもたちを施術してきたが「不器用で自分の体を操れない子が多い」と感じている。「技術を求めるよりも、自分の体をどうやって扱っていくかが大事です。今は色んな情報があふれて“答え”を先に求めることが多く、見ただけでできた気持ちになってしまいがちですが、そこに至る過程を忘れてはいけません。プロ選手たちも基礎があるから技術を養えている。ある程度の量はこなさないと技術は付いてきません」。

 吉良氏は近鉄、オリックスの現役時代には結果を出すことはできなかった。ただ、トレーナーになってからは一流のプロ野球選手たちを間近で支え、選手たちが陰で努力する姿も見てきた。トレーナーとして得た貴重な経験を子どもたちにも伝えていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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