選手が涙「勝てないチーム辞めたい」 脱・勝利至上主義を掲げた学童野球チームの再挑戦
横浜Jブルーウインズはクラス分けして勝利と楽しさを両立
近年、少年野球界で“脱・勝利至上主義”が広がっている。「勝ちにこだわらない」「楽しむことが一番大事」。指導者による怒声罵声や体罰が珍しくなかった昔ながらの指導も、徐々に減ってきた。一方で、こうしたチームでは子どもが“消化不良”になることも。横浜市で活動する少年野球チーム「横浜Jブルーウインズ」はクラス分けして、子どものニーズに応えている。
「まずは、我々指導者自身が野球が大好きだから、野球って楽しいものだから、子どもたちに野球を教えています」。今年からチームの代表を務める野下卓泰さんは、自ら練習する選手を見守りながら話す。野下さんは大学時代、投手としてプレー。その後、大学院で学童野球指導者と選手のモチベーション、野球を通して育まれる力を学んできた。まだ25歳ながら現在は小学校と大学の講師を掛け持ち、今年4月にはNPO法人「自遊」を立ち上げ、土日は子どもたちへの野球指導に明け暮れる。
「普段の練習から楽しくてたまらない環境をつくってあげたい。誰かにやらされる野球ではなく、自ら『野球をやりたくて』練習、試合に向かう。そして野球に没頭し勝利を目指す。そのような自ら考え行動できる子たちを育てたいと考えています」
そんな野下さんは「子どもたちは勝利至上主義であってもいいと思う」と考える。勝利を追求することで「考え」が生まれることは大歓迎だ。一方で問題になるのは、指導者や保護者まで同じ目線で勝利だけを追い求めてしまうこと。「選手以上に結果に固執してしまうことが課題ととらえています」と語る。日曜日に横浜市内の学校グラウンドを借りて行われる練習では、最初の30分は自主練習。早く来た選手から順に始める。選手の「やりたい」を尊重する時間だ。
横浜Jブルーウインズは当初、“脱・勝利至上主義”を掲げ、練習は週1回に限定し、子どもたちが楽しむことを第一にしていた。しかし、練習試合や大会でコールド負けなど大敗する日が続いた。そんな中、ある出来事が起きた。
「コールド負けした日に主力選手の1人が『こんな勝てないチーム辞めたい! 楽しくない!』って大泣きして……。あ、この子にとってはこのチームにいることは幸せではなかったんだなって気付きました」