愛があっても“大声”はNG トーンが圧力に…少年少女のやる気を引き出す「叱り方」
選手に圧力かける叱り方はNG 褒める時は大きな声で
選手を“叱る”指導は必要なのか。少年野球のカリスマ指導者、滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督と、指導歴20年を持つ野球講演家の年中夢球さんが先日、野球技術向上プログラム「TURNING POINT」のイベントで対談。選手を叱る意味やその方法について意見を交わした。辻監督は「口角を上げて、小さな声で叱る」というやり方を提案している。
全国大会3度の優勝を誇る多賀少年野球クラブは、5年ほど前に怒声、罵声を全面的に禁止した。チームのモットーには「世界一楽しく! 世界一強く!」を掲げている。辻監督やコーチ陣がグラウンドで大きな声を出すのは、チームや選手を盛り上げたり、鼓舞したりする時。怒っているわけではない。
選手数が110人を超える多賀少年野球クラブには、未就学児も数多く所属する。辻監督が選手への声かけで意識するのは表情と声のトーン。いいプレーや動きを見せた選手には、笑顔で「天才やな~」と大きな声で褒める。「園児はまだ、天才という言葉の意味を理解していませんが、表情と声のトーンで褒められていると分かってうれしくなります」。辻監督は怒る指導者を否定しない。ただ、こう提案する。
「表情と声のトーンが子どもたちへの圧力になるので、口角を上げて小さな声で叱る方法を試してみるのは良いかもしれませんね。褒める時は大きな声にして、注意は小さな声で。声のトーンだけでも与える印象は変わります。それから、選手のプライドを傷つけないように同級生や後輩、保護者の前で叱るのは避けた方が良いと思います」
学童野球や硬式クラブチームで20年の指導歴がある年中夢球さんも、声のトーンの重要性を強調する。指導者が愛情を持って選手を指摘しても、声が大きいと罵声に捉えられるケースがあるという。大きな声で叱るのは「子どもたちへの圧力になってしまいます」と話す。
年中夢球さんは、叱るポイントも大切になると訴える。空振り三振や失策を叱る指導者には疑問を呈し「選手がトライした結果に対してではなく、全力疾走を怠るなど、できるのにやらなかったことを叱るべきだと思います。やらないことと、やれないことの違いです」と語った。指導者の言葉は選手の成長にも、モチベーション低下にもつながる。たとえ同じメッセージでも、伝え方で印象は大きく変わる。
(間淳 / Jun Aida)
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