清宮幸太郎の夢を砕いた男の今 甲子園つかんだ6年前…ドラフト候補が今も守る“教訓”

トヨタ自動車・松本健吾(中央)【写真:編集部】
トヨタ自動車・松本健吾(中央)【写真:編集部】

トヨタ自動車の松本健吾は、都市対抗2回戦でリリーフに立ち力投

 社会人野球・トヨタ自動車の松本健吾投手は入社2年目。今秋のプロ野球ドラフト会議の指名候補としても名前が上がる存在だ。そして6年前、2017年の夏には、東海大菅生高のエースとして夏の甲子園に出場した。西東京大会の決勝では、早実高の清宮幸太郎内野手(日本ハム)を1安打に封じて、甲子園への夢を断った。都市対抗野球での熱投にも、当時の教訓が生きている。

 松本は20日に東京ドームで行われたENEOSとの2回戦、トヨタが3-1とリードした7回から登板し、3回を被安打1本、無失点に封じた。9回2死一塁では、昨年の大会で最優秀選手にあたる橋戸賞を受賞した度会隆輝外野手と対戦。150キロに迫る直球で押しまくるとファウルにしかならず、9球目のカットボールで一ゴロに打ち取り試合終了。「いいバッターなのはわかっていましたから」と持ち味を出し切っての勝利に笑顔を浮かべた。

 昨冬の日本選手権で、パナソニックを1安打完封し今秋のドラフト候補としてクローズアップされた。ただ今季は都市対抗予選を迎えても調子が上がらなかった。その中で残した結果だ。リリーフに送り出した藤原航平監督は「去年が10だとしたら、今は6とか7。その中でも試合を作ってくれるようになった」と、成長を称えた。

 松本も「打たれたくないと思うとボールもアバウトになって、1イニングに何点も取られていた。粘れるようになったのが良かったと思います。良くない時でも、打たれても最少失点で行けるようになりました」と意識の変化を口にする。

トヨタ自動車・松本健吾【写真:編集部】
トヨタ自動車・松本健吾【写真:編集部】

清宮を封じた6年前の夏…変わらぬ思い「逃げずに勝負しなきゃ」

 そして松本には、夏と言えば思い出される場面がある。2017年夏の神宮球場。東海大菅生のエースとして西東京大会の決勝に進出し、対戦したのは清宮を擁する早実高。最後の夏に、2度目の甲子園出場をかける清宮に世間の注目が集まった。

 ただ、勝ったのは松本の方だった。清宮を3打数1安打に封じ、9回2失点完投。6-2で勝利して甲子園への切符をつかんだのだ。6年前の教訓はこの日、同じくドラフト上位候補として注目される度会を抑え込んだ対戦にまで通じている。

「どんな強打者にも、逃げずに勝負していかなきゃダメということを学びましたね。打たれても。相手も1人の打者にすぎないんですから。マウンドに上がったら、自分が一番いい投手だと思っています。守りに入らず、攻められたから抑えられた」

 チームには亜大の先輩にもあたる嘉陽宗一郎投手、今年40歳を迎える佐竹功年投手と、日本代表でも豊富な実績を誇る投手がいるが「もちろん皆さんからアドバイスを頂きますし、いい投手ですけど負けたくないという気持ちが強い」とただ後をついていくつもりはない。

 強気の言葉がポンポン口をつく松本。優勝の立役者となれば、その時こそ自身の名前も注目される。プロへの扉も開いていくはずだ。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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