「勝たなければ」背負った重圧 女子日本一の主将…大阪桐蔭の“ドラ1候補”との絆
神戸弘陵が背負った“秋春夏連覇の重圧”「このままでは勝たれへん」
阪神甲子園球場で3年連続の開催となった「第27回全国高等学校女子硬式野球選手権大会」の決勝は、秋春夏連覇の“3冠”を狙う神戸弘陵(兵庫)が岐阜第一(岐阜)に8-1で勝利し、女子史上初の栄誉をつかんだ。主将の三村歩生内野手(3年)は「勝たなければいけないというプレッシャーがありました」と胸をなでおろした。快挙の裏には、大阪桐蔭のエースで、今秋のドラフト会議でも1位候補と注目される前田悠伍投手(3年)との“絆”があった。
大阪府出身の三村は、小学生のときにオリックスJr.の一員としてプレーし、中学時代には大東畷ボーイズの二塁手兼投手としてタイガースカップに出場するなど、激戦の関西地区で常に最前線を走ってきた。2021年に高知中央と甲子園初代女王を争った決勝でも、1年生で唯一ベンチ入りした実力者である。
しかし、全国から有望選手が集まる女子高校野球の横綱・神戸弘陵ながら、入学時から「最弱世代」と石原康司監督からは指摘され、特にこの1年は「このままでは絶対に勝たれへん」ともがき続けた。そんな三村が刺激を受けていたのが、「オリックスJr.のときに結構しゃべったり、投げている姿もよく見ていた」という、大阪桐蔭の前田だ。
「良いピッチャーだなと小学生の頃から思っていましたが、(高校入学後の前田が)1年生のときから活躍していると知って、自分も追い付けるようにという思いがありました」。大阪桐蔭はスマートフォンを禁止しているためLINEなどでのやり取りはできないが、前田から応援タオルが届くなど、今も双方の保護者を通じて交流がある。
大阪桐蔭が敗れたと知り「私は勝たなければ」
昨夏は大阪桐蔭も、同じく秋の神宮大会、春の選抜に続く“3冠”を狙っていた。達成すれば、松坂大輔氏(元西武、レッドソックス)らを擁した1998年の横浜(神奈川)以来、男子史上2校目の快挙だったが、惜しくも夏の甲子園は準々決勝で敗退。三村は当時2年生ながらエース格だった前田の心情を「勝ち続けていたので、同じようなプレッシャーがあったんだろうなと思いました」と慮った。
さらに今夏、前田が大阪大会決勝で敗れたことを知ると「私は勝たなければいけない」と、より気が引き締まったという。今春の選抜大会で、神戸弘陵は無失点、無失策での優勝を飾ったが、その後は「夏前まで練習試合でも公式戦(関西女子硬式野球選手権ラッキートーナメント大会)でも全然勝ちが付かなくて、雰囲気が落ちてしまっていた」。V字回復に向けて「一人やないんやから、みんなで頑張ろう」と言ってくれたチームメートの言葉にも救われた。
精神的な面も含めて「いろんな人に支えられた」と感謝を口にした三村。「3番・二塁手」として今夏は全試合で安打を放ち、決勝では三村も含めスタメン全員が安打を記録した。投手陣も樫谷そら投手(3年)と伊藤まこと投手(3年)の両左腕が継投してわずか1失点。投打に圧倒して決めた3季連続の日本一。もう「最弱世代」とは呼ばせない。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/