50代現役最年長サウスポー 気温35度で100球完投…女子硬式野球で貫く「生涯現役」

女子硬式野球チーム「侍」の現役最年長左腕・千葉奈苗【写真:田中健】
女子硬式野球チーム「侍」の現役最年長左腕・千葉奈苗【写真:田中健】

「侍ジャパン女子代表」前身チームでのフロリダ遠征

 女子硬式野球の普及発展を目的に開催され、「U-15」「高校」「大学・企業・クラブ」の3カテゴリーに分かれて覇権を争うヴィーナスリーグ。そこに参戦するクラブチーム「侍」に所属する左腕・千葉奈苗さんは、58歳の女子硬式野球の現役最年長投手だ。小学4年生で野球に興味を持ち、中学、高校とソフトボールに熱中。女子野球がまだポピュラーでない20~30代のころは軟式チームなどを渡り歩きプレーしていた。

 転機は33歳の時だった。希望して「チーム・エネルゲン」(大塚製薬)のメンバーとして、米フロリダ州に遠征した。同チームは、現・NPB日本代表「侍ジャパン」女子チーム(女子野球ワールドカップ6連覇中)の基盤となった。1998年まで全米女子野球リーグの日本人初プロ選手として活躍した鈴木慶子さんが主将だった。

 これが実に楽しかった。メジャーがスプリングキャンプを張るグラウンドで試合。当時現役だったジョン・スモルツ投手(ブレーブスほか=通算723試合213勝154セーブ)と肩を組んで記念撮影もした。「遠征費は自分で当然出さなくてはいけないから、いくら働いても足りませんでした(苦笑)。でも、その後のオーストラリア遠征やアジア各地への遠征も、野球をやっていたからこそ味わえた、かけがえのない経験でした」

 そして2004年、千葉さんが39歳のときに、タレント・萩本欽一さんが創設し、片岡安祐美現・選手兼監督で有名な「茨城ゴールデンゴールズ」のトライアウトを受ける。不合格ではあったが、当時のヘッドコーチ・鹿取義隆氏(前・巨人GM)に左腕から繰り出すカーブを認められ、そのトライアウトで打撃投手を務めることになった。これは千葉さんのひそかな自信になった。

 これが野球人生を好転させた。そのトライアウトで再会した選手が「侍」出身だった縁で、翌2005年に念願かなって「女子硬式野球」クラブチームの「侍」に入団。同期には大エース・中島梨紗投手(現・NPB日本代表「侍ジャパン」女子チーム監督)がいた。「侍」は、埼玉栄高OGが中心となり2002年に結成されたチーム。よく間違われるが、「侍ジャパン」より歴史は古い。千葉さんは今季入団19年目を迎える。

最近は「先発3イニング無失点」をめざすオープナー

 千葉さんの球種はストレート、カーブ、スライダー、ツーシーム。一般的な女子野球エースのストレートが平均110キロ前後、そのカーブぐらいの85キロが、現在の千葉さんの最速だ。年齢から考えれば、ありえない数字なのだが、「自分でガッカリするので、数字は追わないようにしています。でも、それならもっと遅いツーシームをチェンジアップ的に使えば有効です」と前向きだ。

 さらに、千葉さんは自分の投球を冷静に自己分析する。「ストレートとカーブで追い込んで、スライダーで引っ掛けさせるのが自分の投球スタイル。三遊間に打球が飛ぶときは調子がいいんです。現在は先発して打者一巡、3イニング無失点なら及第点かな」。

 大沼友己監督はこう話す。「数年前まであった侍Beeで、50代で7イニング完投、気温35度の日に100球以上を投じるスーパーウーマンでした。ふつうなら引退している年齢なのに、『生涯現役を貫く』と言っています。最近は2イニング前後を、ノラリクラリと打者の目先をかわしていきますよ。そういう意味では『オープナー』ですね(笑)」。

【実際の映像】まるで山本昌さん! 30年継続の筋トレで実現…58歳女子野球最年長サウスポーの投球フォーム

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