15年で5000チーム消滅…入場行進にもバラつき “小学生の甲子園”に見る「球界の危機」
酷暑下での試合回避など様々な対策を打ち出す全軟連
15年前は約1万5000あった、小学生の軟式野球チームが減り続けている。1975年の統計開始後初めて、昨年度は「1万」の大台割れ。今年は3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で野球日本代表「侍ジャパン」が世界王座に返り咲いたものの、15年で5000チーム消滅という激減の奔流には杭すら打ち込めていないのが実情のようだ。
大多数が加盟登録する全日本軟式野球連盟(JSBB)はむろん、手をこまねいているわけではない。来年度の指導者資格制度の導入にさきがけて、選手の心身と未来を守ろうとの意図で、ルールを強化している。
7イニング制で最長150分だった試合は、昨年度から6イニング制で最長90分に。今年度からは、従来よりボール約1個分大きな一般用の本塁ベースを全国一律で採用。また、毎年8月に日本一を決する全日本学童軟式野球大会(マクドナルド・トーナメント)は、炎天下で過酷な状況となりやすい正午から16時までの試合を昨年から回避するように。今年はさらに、ベンチ入りの人数を従来の20人から25人へ拡大した。
8月5日、明治神宮野球場であった開会式はコロナ禍前と同様に、47都道府県の代表(北海道2枠、東京は開催地枠含め3枠)と、前年度優勝枠を加えた51チームが晴れて入場行進。この時に目立ったのが、長い隊列と乏しい隊列との差。要するに、選手数のバラつきが顕著だった。
そこで、51チームの登録メンバー数と内訳から統計をとってみた。さらに10年前の2013年度と比較をしてみると――。
25人枠満たしたチームは12%足らず…5年生も人数不足
まずは2023年度。25人の登録枠が埋まったのは6チームで、全体の11.8%にすぎなかった。昨年度までの「20人枠」に引き下げると、これに達していたのは21チーム(41.1%)となった。
6年生が9人以上いたのは、25チーム(49%)と、過半数割れ。予選を突破してきた都道府県王者でも、その半数以上は下級生の手を借りていたということになる。今夏、初優勝した新家スターズ(大阪)は、登録19人で6年生は12人いたが、レギュラーのうち2人は5年生だった。
では10年前はどうだったのか。20人の登録枠を埋めたのは23チーム(45.1%)で、「20人枠」で比較した場合、現在よりもわずかだが多かった。6年生が9人以上いたのは31チーム(60.8%)で、現在の約1.25倍だった。
「小学生の甲子園」と言われる全国舞台でも、登録枠を増やす対策をしたところで、それを満たすチームはまれで、1チームあたりの最上級生については確実に減っていることが明らかとなった。
案の定の結果に驚きはないが、気掛かりなのは全般的に5年生がさらに少ないこと。コロナ禍の活動自粛などにより、野球を始めるタイミングの多くを失った世代なのかもしれない。来年の全国大会になれば、6年生(現5年生)の多いチームが予選を勝ち上がってくるのか……。
なお、学年別に活動しているので大会の登録人数は少ないが、全学年を合わせれば数十人規模というチームも少なくないことも付記しておきたい。
〇大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」でロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」、「ランニングマガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて編集・執筆中。
(大久保克哉 / Katsuya Okubo)
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