「丸一日練習」廃止で変化した“親子関係” 学童Vチームも方針転換…時短の効果

「中条ブルーインパルス」を率いる倉知幸生監督(左から3人目)【写真:加治屋友輝】
「中条ブルーインパルス」を率いる倉知幸生監督(左から3人目)【写真:加治屋友輝】

昨夏全国制覇の中条ブルーインパルス…週末は半日練習で保護者の負担軽減

 少年野球では近年、練習時間を短くするチームが増えている。ともに全国制覇の経験がある滋賀・多賀少年野球クラブと石川・中条ブルーインパルスも、週末に丸一日練習することはない。27日に出演した野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のイベント「日本一の指導者サミット」では、短時間練習のポイントやメリットを語った。

 長時間練習のイメージが強い少年野球。選手をサポートする保護者の負担が大きいと捉えられ、競技人口が大幅に減少している要因の1つにも挙げられている。だが、最近は短い練習時間で結果を残しているチームもある。

昨年夏に全国制覇を成し遂げた中条ブルーインパルスは、平日の練習時間が1時間半に限られる。時間を最大限活用するため、メニューをしぼって練習している。例えばノックに特化した日は、基本的な動きの確認から、アウトカウントや走者、打順や点差などを細かく設定した内容も盛り込む。チームを率いる倉知幸生監督は「その日のテーマを明確にして練習しています。時間がないので子どもたちはテキパキと準備します」と語る。

 土日祝日は試合がなければ、午前か午後のどちらか半日の練習としている。弁当をつくる保護者の負担を減らす目的がある。暑さで集中力を保つのが難しい夏場は長時間練習が逆効果と考え、選手が物足りなさを感じるくらいで切り上げている。すると、思わぬ効果もあった。全体練習後に開放しているグラウンドで親子が練習。もっと練習したい子どもの要望に保護者が応え、野球を共通言語にした家族の時間が生まれている。

日本一3度の多賀少年野球クラブ…競技人口減少への危機感で短時間練習に

 多賀少年野球クラブは平日2日を自主練習として、全体練習は土日祝日のみとしている。チームには幼児から小学6年まで120人を超える選手が在籍しているため、各学年の練習時間を区切っている。辻監督が練習時間を短縮した理由は、競技人口減少に危機感を抱いたからだった。

「今は共働きの家庭がほとんどで、週末は他のきょうだいの用事もあります。保護者が丸一日拘束されることで野球が敬遠されているのであれば、時短練習にしようと考えました。全国大会で連覇して、新たな壁をつくった意味合いもあります」

 多賀少年野球クラブは、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」で2018、2019年に連覇を果たした。当時は週末に朝から夕方まで練習していたが、翌年から短時間練習に方針を変えた。辻監督は「全国で勝つという意味では失敗かもしれません」と話すが、2020年以降も毎年マクドナルド・トーナメントに出場している。

 最近は園児から野球を始めて小学6年まで短時間練習にすることで、小学3、4年生で野球を始めて丸一日練習するケースと“生涯野球時間”で並ぶと考えている。「短い練習の積み重ねで総合的に同じ練習時間にすれば、再び日本一になれると思っています。時間が短いと練習を見る保護者が多いので、選手のできていないことを親子で確認できる良さを感じています」と辻監督。朝から夕方まで練習する少年野球の常識は変わりつつある。

9月29日(金)まで、まだまだ申し込み受付中!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では9月28日と29日、午後8時からオンラインイベント「日本一の指導者サミット」を開催。最終日の29日まで参加申し込みは可能。

【日本一の指導者サミット・詳細】
https://first-pitch.jp/article/news/20230902/5374/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】
https://id.creative2.co.jp/entry

(間淳 / Jun Aida)

少年野球指導の「今」を知りたい 指導者や保護者に役立つ情報は「First-Pitch」へ

 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

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