強打者に共通する“インサイドアウト” 少年野球でも有効…下半身始動の重要性
平戸イーグルスの中村大伸監督は、五輪で3冠王の松中信彦氏らとプレー
目の前で見てきたトップレベルの打者には共通点があった。横浜市にある小学生軟式野球チーム「平戸イーグルス」を率いる中村大伸監督は、低学年はアッパースイング、高学年はインサイドアウトに重点を置いて打撃指導している。日本が銀メダルを獲得したアトランタ五輪で主将を務めた中村監督は、間近で見た日本を代表する打者のスイングから下半身始動の重要性を学んでいた。
横浜商時代に春夏連続で甲子園準優勝を果たした中村監督は、その後に進んだ日体大とNTT東京で日の丸を背負った。1996年のアトランタ五輪では銀メダルを手にしている。当時の日本代表はアマチュアで構成されていたが、3冠王を獲得した元ソフトバンク・松中信彦氏、日米通算2450安打を記録した元中日・福留孝介氏、オリックスと巨人で通算1928安打をマークした谷佳知氏ら、後にプロ野球を代表する選手がそろっていた。個々に構え方やタイミングの取り方は違っても、強打者には共通点があると中村監督は感じていた。
「下半身からきれいに回って、投球を上から叩き潰すのではなく下から運ぶようなスイングをしていました。日本代表でプレーしてから、下半身始動のスイングとバットを内側から出すインサイドアウトの大切さを実感しました」
つま先から膝、腰、上半身と下から上に体を回転させてスイングすると、投球を長く見ることができるため、ボール球に手が止まるという。中村監督は「力んでしまう時やハーフスイングを取られてしまう時は、上半身から始動しています。特に中学以降は変化球が入ってくるので、上半身始動で対応するのは難しくなります」と語る。
小学校低学年にはアッパースイング、高学年にはインサイドアウトを意識させる
ただ、小学生に下半身始動と言っても伝わらない面がある。そこで、中村監督は小学校低学年には、アッパースイングでバットを振るように指導している。
「バットを下から振ろうとすると体の構造上、下半身から回す動きになります。先に上半身を回してアッパースイングはできません。難しい説明をしても理解するのが難しい年代には、理想的な動きが自然と身に付く練習や指導をしています」
低学年で下半身始動の動きを覚えさせ、高学年にはバットを内側から出してスイングするインサイドアウトを教える。低学年で身に付けた下半身の動きは大切だが、実際の投球は真上からではなく前から来るため、高学年ではスイングの軌道を調整する。ダウンスイングは投球を点で捉える形になるが、インサイドアウトのスイングは投球の軌道にバットが入るため確実性が高くなる。
また、投球とバットが接する時間が長くなり、飛距離も伸びる。中村監督は「バットを地面と平行に振るイメージで、後ろ側の肘(左打者なら左肘)を前に出してバットが体の近くを通るようにスイングします。子どもたちにはフライを打つように伝えています」と話す。
構え方とタイミングの取り方に関しては選手に任せているという。「タイミングの取り方は足、手首、バットなど様々ですが、個性なので何も言いません。上手くいかない時に提案するケースはありますが、違和感があれば元に戻すように伝えています」。強打者に共通するポイントに指導の重点を置き、選手を型にはめることはない。
(間淳 / Jun Aida)
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