指導者が理解すべき小学生の“発達段階” 感情との不一致は「野球やる子いなくなる」
学童野球は“変化”に応じて「学年ごとに3分割が理想」と日本工業大・松井克典准教授
下は1年生から、上は6年生までいる学童野球のチーム作りを行う際、全員一緒に練習をさせるか、それとも学年別に分けた方がいいのか、悩む指導者も多いのではないだろうか。野球指導者のための学びの会「野球まなびラボ」(埼玉県さいたま市)代表理事を務め、日本工業大学でコーチングとチームビルディングの研究を行っている松井克典准教授は、「低学年、中学年、高学年と3分割ぐらいに分けてやるべきだと思います」と強調する。
「学童野球の指導の難しさは、発達段階がまるっきり違うというところ。6年生と1年生では、思考能力や身体能力も全然違います。その発達段階を理解していない指導者も多く、低学年により専門的なことを教えすぎて子どもが野球から離れたり、上級生とごちゃ混ぜにしてやらせることで、6年生は『もっとやりたいのに』といったミスマッチが起こったりしています」
野球をやる目的や目標も、学年によってそれぞれ変わってくる。松井氏らのグループが数年前、1~6年生の野球少年300人にアンケートをとったところ、1、2年生は「野球が楽しい」「試合に勝ったら楽しい」という答えが多く、3、4年生は「ホームランを打ちたい」などの個人的な技術向上、5、6年生になれば「仲間と一緒に勝ちたい」というチームワークにフォーカスされてくるという。
「学年が上がるにつれて、気持ちの変化とともに野球の取り組ませ方も変えていく必要があります。特に低学年はミニゲームでもいいから勝ちたいという感情が先にきます。これは大人が思っている以上に、子どもの目線まで下げてやらないと、満足度は高まりません。基礎だ、基本だ、キャッチボールが大事だとかいって1日が終わるチームもありますけど、1、2年生でそれをずっとやっていたら、野球をやる子はいなくなると思います」
形にこだわる“高校野球のミニチュア版”より「“楽しい”を優先して」
松井氏は、低学年が野球を楽しんで行えるための取り組みにも力を入れている。コーチ兼アドバイザーを務める、幼児や小学生向けの総合型スポーツアカデミー「さいたまインディペンデンツ」(埼玉県さいたま市)では、スローイングが一塁“近辺”に届けばアウト、すべてのプレーでタッチプレーが必要ないフォースプレーにするなど、ルールを簡易化。初心者でも野球に溶け込みやすい環境を作っている。
「高度なことをやり過ぎたり、形にこだわるといった“高校野球のミニチュア版”のようなことをやる指導者が本当に多いです。最初のうちは厳密なルールでやる必要はありません。それよりも投げて楽しい、打って楽しい、というところを優先した方が、幼児や低学年にとってはいいと思います」
一人でも多くの子どもたちが野球を始め、長く続けてもらうために、まずは楽しさから教えることが大人たちの役割だ。松井氏は29日に開催するイベント「人気少年野球チームに学ぶ『主体性が育つ組織づくり』」に参加。コーチングやチーム組織について学びたい指導者は、是非とも参考にしたいところだ。
松井克典氏も参加…子どもたちが能動的に動けるチームづくりを徹底討論
First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、29日午後8時30分からオンラインイベント「人気少年野球チームに学ぶ『主体性が育つ組織づくり』」を開催します。滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督をホスト役に、東海中央ジュニア・竹脇賢二総監督と松井克典氏が、野球を通じて子どもたちが能動的に動けるチームづくりのヒントを語り合います。詳細は以下のページまで。
■オンラインイベント「人気少年野球チームに学ぶ『主体性が育つ組織づくり』」詳細
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(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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