河川敷に現れた名将の“予言”「1周する姿見える」　逸材中学生の資質見抜く慧眼

高校野球総合
2024.03.27

2018年春夏連覇時の大阪桐蔭主将・中川卓也が語る強豪校進学へのアピール

「俺のことを見てくれ」という強気のアピールが、地元・大阪の名門高校進学と、甲子園での栄光につながった。2018年に春夏連覇を果たした大阪桐蔭高で主将を務めた中川卓也内野手（東京ガス）は、周囲を見渡す観察眼で、投打の技術だけに止まらない“資質”を磨いた。Full-Countでは「甲子園球児の育ち方・育て方」をテーマに、甲子園へ導いた元監督や選手、その保護者にインタビュー。春夏通算9度の甲子園Vを誇る強豪校入りまでの過程について聞いた。

　大阪桐蔭高で2年春の選抜に優勝し、3年時には主将として春夏連覇の偉業を成し遂げた中川は、その後早大を経て、現在は社会人・東京ガスでプレーしている。兄・優さんの影響で野球を始めたのは4歳の時。学童チーム「北出戸モンスターズ」の先輩、城間竜兵投手（現パナソニック）や優さんが、八戸学院光星（旧校名・光星学院、青森）に進んで聖地で活躍したこともあり、「いつかは自分も甲子園へ」と目標を抱くようになった。

　中学でも「甲子園を目指すなら、早く硬式を」と進路選択。初めはオール枚方ボーイズに入り、その後、大阪福島シニアへ移籍した。

「当時の大阪福島は、まだそこまで強いチームではなく、河川敷のグラウンドもデコボコしているし、置いてあるマシンも古いし、親にも『1、2回戦で負けるチームかもしれないけれど、いいの？』と言われました。それでも、環境というのは自分の考え方1つで、いかようにもなります。中尾（学）監督は選手の意見を聞きながら指導してくださる方ですし、フィーリングが合う感じがしました」

　周りには俊英がひしめいていた。前所属のオール枚方には、大阪桐蔭で同僚となる藤原恭大（現ロッテ）や小園海斗（報徳学園、現広島）らがいたし、大阪福島のチームメートにも野村大樹（早稲田実業、現ソフトバンク）、濱将乃介（東海大甲府、現中日）、増田陸（明秀日立、現巨人）らがいた。強豪校に入るためにも、先輩・後輩も含めて“全員がライバル”という意識だった。

周囲を見渡す観察力は「自分の技術向上にも、チーム力向上にもつながる」

　その中で、自身の最大のアピールポイントとしたのが“野球勘”だという。小学時代は捕手、中学では投手や二塁手を務めていたが、普段の練習でも試合でも、相手だけでなく自チームの選手も、よく観察するように意識していた。

「これは、兄の影響が大きいです。兄は投手として決して球が速い方ではありませんでしたが、打者を観察してタイミングを外したり、狙い球を外したり、技術で相手を抑えていました。そこから、自分も周りをよく観察するようになったんです」。小学時代も中学時代も、中川はキャプテン役を託されているが、周囲を見渡す観察眼は、チームを束ねる資質も磨いてくれた。

　中学2年の秋、関西地区No.1硬式チームを決める「タイガースカップ」決勝戦でオール枚方に完敗。悔し涙を流した中川だったが、この大会で目をつけてくれたのが、大阪桐蔭の西谷浩一監督だ。

「河川敷のチームのグラウンドへ階段を降りてくる姿を見て、『あれ、西谷監督じゃない？』って。初めて見に来てくださった時は驚きました。まさか、その時は自分に声が掛かるとは思っていなかったですし、『俺のこと見てくれ』くらいの気持ちでアピールしましたね」

　何度か視察に来てくれた西谷監督は、投打の技術だけでなく、高校で主将を担える資質も含めて中川を評価してくれた。「（2018年夏の）第100回大会で、中川君が優勝旗を持って甲子園を1周している姿が見える」。3年後に的中することになる指揮官の“予言”めいた誘いの言葉が、地元・大阪の名門入りを決意する決定打となった。

　周囲を観察する習慣は、自身の技術向上にも、チーム力向上にもつながると中川は語る。「相手を見ているからこそ、自分に置き換えて考えることもできるし、いろいろなことへの対応力にもつながります。最終的には、チーム力がなければ甲子園にも行くことはできませんから」。4月1日からの「甲子園予備校」に参加予定の中川は、各年代でチームの柱となった経験を踏まえて、夢を目指す選手や指導者に向けてアドバイスを送る。

大阪桐蔭高で春夏連覇・中川卓也選手も“参戦決定”！

　Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、4月1日（月）から5夜連続（午後8時から）で、オンラインイベント「甲子園予備校」を開催します。甲子園出場経験のある監督、選手と保護者がYouTubeライブに登場。指導方法や練習方法、日頃の生活習慣など、自身の経験を基に、夢や目標を叶えるための対策や準備についてヒントを授けます。参加費は無料。詳細は以下のページまで。

【甲子園予備校・詳細】