複合バット禁止で求められる本当の技術 NPBジュニア指導者が明かす“好選手の条件”

阪神ジュニアの玉置隆監督(左)と森田一成コーチ【写真:球団提供】
阪神ジュニアの玉置隆監督(左)と森田一成コーチ【写真:球団提供】

2024年阪神ジュニア・玉置監督と森田・岩本両コーチが語る選考ポイント

 選ばれし16人の“精鋭小学生”たちの行方は? 強豪校やプロの“登竜門”とも呼ばれる、年末に開催の「NPB12球団ジュニアトーナメント」の選考はすでに始まり、球団によっては大詰めを迎えるところもある。今年の阪神タイガースジュニアはOB・玉置隆氏が監督に就任し、2年ぶりの日本一を狙う。今回は監督、コーチに“プロ目線”の選手選考について聞いた。

 これまで数多くのプロ野球選手を輩出してきた同大会は、今年で20回目の節目を迎える。タイガースジュニアからも阪神・佐藤輝明内野手、ロッテ・安田尚憲内野手らが過去に出場。セレクションを突破した逸材揃いのチームでプレーすることは、中学や高校に向け大きなモチベーションになる。

 2015年限りで阪神を退団し社会人野球でもプレーした玉置監督は、これまで「タイガースアカデミー」のコーチを務めるなど長年、子どもたちの指導を行ってきた。過去に比べて小学生のレベルは「各段に上がって、とんでもない能力、体格を持った子もいる」と驚きを口にする。

 まだ、選考段階だが指揮官が思い描くのは「勝てるチーム作り」だ。“4番・エース”だけを集めるのではなく、守備や走塁にも目を通していく。自身が投手コーチとして挑んだ昨年の敗戦が糧になっているという。

「1つのミスで大量失点で負けたので、どちらかというと守備メインで考えたい。軽いプレーはいらない。取れるアウトを確実に取れるような選手を選んでいきたいです。同じレベルなら気持ちの強い子。熱い思いを持って、気持ちを前面に出す選手を求めています」

 本番でNPBと同様のユニホームを着用しプレーできるのは、わずか16人。所属チームでは主力でも、タイガースジュニアに入れば補欠になる選手も存在する。「初めて挫折を味わうこともあるでしょう。でも、それを乗り越えていくことも必要。大会までにレギュラー争いを繰り広げてほしい。2人のコーチを信頼しているので、選考を含めて意見を取り入れたいと思っています」と語る。

阪神ジュニアの岩本輝コーチ【写真:球団提供】
阪神ジュニアの岩本輝コーチ【写真:球団提供】

2年前に複合バットが禁止「ポイントは前で、強く振れることが必要」

 打撃部門を託されているのが、2014年まで阪神でプレーした森田一成コーチだ。選手選考のポイントは、スイングスピードとミートのポイントだという。同大会では2年前から複合バットが禁止され、金属バットを使用する。NPBジュニアに選出された投手は球速130キロを計測することもあり、「スイングの中で自分のポイントを持っている子は、過去を見ても活躍する傾向があります」と指摘する。

 速球に対応するため、以前に比べ「ポイントは前で、強く振れることが必要」だという。複合バットは多少詰まっても当たれば飛距離は出ていたが、金属や木製は確実にバットの芯でとらえなければ安打は生まれない。走塁面でも、ただ足の速い子だけでなく「状況に応じた走塁や、攻守交代でも全力疾走する子は目にとまります」と、選考の注目点を挙げる。

 試合を左右する投手陣を率いるのが阪神、オリックスでプレーした岩本輝コーチ。動画選考では球筋や投球フォーム、さらには試合の動画であれば相手打者がどのような反応をしているかを重視し、二次審査の実技では制球や投球のテンポ、マウンドさばきなどにも注目するという。

「球の質はもちろん、大舞台をイメージした時に任せられる投手でないといけない。メンタルやマウンド度胸は、カテゴリーが上がれば上がるほど必要になります」。また、16人と限られたメンバーだけに「投手だけでなく、複数のポジションを守れる選手はこちらとしても助かります」と語る。

 連覇を目指した昨年は決勝トーナメントに進出できず敗退。「負けた時に泣くのは子どもたち。その姿を見た時に何もしてあげられない無力さを感じました。楽しいだけじゃなく、勝負の厳しさも感じてほしい。メリハリを持ってやっていきたい。本当に優勝する気持ちを持って今年も挑んでいきたいです」と玉置監督は力を込める。

 12月末に開催される大会で“勝利の涙”を流すため準備を進めていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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