小学校低学年で必修の“7つの能力”とは? 中学以降も技術伸ばす「野球上達」メニュー

小学生の早期に習得したい「7つの能力」とは(写真はイメージ)
小学生の早期に習得したい「7つの能力」とは(写真はイメージ)

巨人Jr.も注目…基礎運動能力が伸びる年代向け「コーディネーショントレ」を紹介

 投げる・打つの技術はまだ難しく、集中力も長くは続かない……。そんな小学校低学年の子たちに、どんな練習メニューを組めば良いのか、悩むコーチや保護者も多いことだろう。そこでお勧めなのが、運動能力の基礎づくりはもちろん、体ができた中学生以降も技術を伸ばす可能性を高める「コーディネーショントレーニング」。元楽天投手で、仙台市を中心にキッズコーディネーショントレーナーとして活動する土屋朋弘さんが、ウオームアップとしても取り入れられるメニューを紹介する。

 コーディネーショントレとは、リズム・バランス・変換・連結・反応・定位(空間把握)・識別(用具操作)の7つの能力を鍛えることで、身体操作能力の向上を目指すもの。特に「プレ・ゴールデンエイジ」という脳神経や運動神経が発達する5歳~8歳、つまり未就学児から小学校低学年の早い段階で行うと効果が大きく、自分の体を思うように動かせて技術を身に付けやすくなる、つまりは「野球が上手くなる」ことにつながる。巨人ジュニアでも、選手選考の一環として注目している能力だ。

 土屋さんは現在、小さい子への運動指導に加えて、東北楽天シニアのコーチとして中学生年代を、さらに、自身で立ち上げた「ワイルドギース・ベースボールチーム」では小学5年生までの野球指導にも携わる。保護者の負担減などのユニークな方針を掲げ、もちろんコーディネーショントレも導入するなど、未来を見据えた指導を心がけている。

 低学年に向けて、土屋さんが特にお勧めするのが「切り返し動作」を入れたメニュー。例えば、カラーコーンをジグザグに置き、左右や斜めに切り返しながら動いていく。7つの中の「バランス」や「反応」、野球でいえば守備・走塁での俊敏性につながる。

「脳への刺激も入れるのであれば、3色のカラーコーンを用意し、コーチが『イチ!』と言ったら青のコーンに、『ニ!』と言ったら赤のコーンに触りにいく。視覚を利用するなら、指を1本立てたら黄色に、2本立てたら青に……。聴覚を利用するなら、笛を吹いたら青に、手を叩いたら赤に……などというようにバリエーションをつけられます」

ラダーのトレーニングを指導する土屋朋弘氏【写真:本人提供】
ラダーのトレーニングを指導する土屋朋弘氏【写真:本人提供】

コーディネーショントレは「できない」が大前提…7割できたら違うメニューを

 また、ラダー(ひも状のはしご)を使うのも効果的だ。マス目を連続ジャンプしていく場合は、速く跳べばいいわけではなく、きちんとした動きで、前の人と同じテンポで跳んでいくのがポイントだという。

「人の動きと合わせる協調性もコーディネーションの大事な要素です。また、ボールを両手で左右に弾きながらマス目を動いていくような“複雑さ”を加えれば、『リズム』はもちろん、体の上下の『連結』にも、ボールを扱うので『識別』にも、マス目の中に体を入れていくので『定位・空間把握』にもつながります」

 こうした能力を「プレ・ゴールデンエイジ」の間に磨いておけば、反復練習によって野球の技術が伸びていく年代「ゴールデンエイジ」(9歳~12歳)へと、スムーズに移行できる。

 ちなみに、コーディネーショントレは「できない」ことが大前提なので、「なんでできないんだ!」などと叱るのは絶対NGだ。逆に、「できてしまう」のは神経系への刺激につながらない。「7割程度できるようになったら、違うメニューに変えるのか基本です。“形”になってしまうとコーディネーションではなくなります。毎回同じ動きではなく、異なる動きを入れてアレンジしていくのがいいでしょう」とアドバイスする。

 また、「難しいかもしれませんが、客観的に見て『自分たちのチームに足りない』と感じるものを取り入れてほしい」とも。土屋さんが他チームを見ていても、ボールを扱うのは上手なのに、みんなベタ足走りをする、一定の動きはできるのに、アレンジを加えると全くできなくなる、など、それぞれに特徴的課題はあるものだという。

 コーディネーショントレをウオームアップ中や、ウオームアップ直後5~10分間取り入れてみる。それだけでも将来、大きな差として表れる可能性がある。「小学生の段階では明確でなくても、中学・高校と上がるにつれて『あのチームからは、伸びる選手がよく出てくるね』などと評価されるはずです」。

 早くから野球の動作だけにこだわる必要はない。将来を見据えて、まずは運動の基礎から。遊び感覚で楽しみながら、子どもたち全員の可能性を引き出してあげたい。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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