「縦振り」習得で急成長 実力不足→高3で快進撃…中学球児の“後悔しない”進路選択

館林慶友ポニーの打撃練習の様子【写真:伊藤賢汰】
館林慶友ポニーの打撃練習の様子【写真:伊藤賢汰】

中学硬式野球「館林慶友ポニー」は選手自身が希望する高校進学を支援する環境

 中学野球における高校進学は、選手の将来に大きな影響を与える重要な決断だ。全員が志望校に進学できることが理想だが、実力や学業成績によって選択肢が限られたり、指導者が進路を決定したりするケースもある。中学硬式クラブ「館林慶友ポニー」(群馬県館林市)は、2019年の創設以来、「進路の選択は選手自身に任せる」という一貫した方針を掲げている。慶友整形外科病院の医師でもある古島弘三代表は、「選手が自ら行きたい高校を見学し、最終的な決断を自分で行うことが重要」と述べる。

 館林慶友ポニーでは、選手が自ら最適な高校を選べるよう、主体的な進路選択を尊重。古島代表は、選手が希望する高校に進学できるよう支援し、学業にも力を入れることの大切さを常に強調する。近年では、強豪校でも学力を重視する傾向が強まっており、「野球だけでなく、勉強にも励み、バランスの取れた選手になってほしい」というメッセージも選手たちに伝えている。

「選手自身が進路を選ぶことで、高校生活や野球にしっかりと向き合うことができる、自分が決めた高校であれば後悔することが少ないだろうと考えています。親や指導者が選んだ学校に進んでも、本人が納得していない場合や、順調にいかない場合があるかもしれません。自分で選択して決断することが、その子にとって、将来的に不遇な状況にも耐えられる力が育つと思います」

 強豪校への進学を強く望んでいた、ある選手がいた。古島代表は当初、その選手の実力ではレギュラーを取ることやベンチ入りすら難しいと感じていたが、彼の強い意志と熱意を尊重し、最終的には選択を支援した。

 この選手はチーム在籍時に、MLB傘下マイナーでのプレー経験を持つ根鈴雄次コーチから、メジャー流の「縦振り」打撃理論を学び、高校でも着実に努力を続けた。その結果、3年夏には捕手としてスタメンを勝ち取り、チームの快進撃を支える存在にまで成長したという。

「彼は、根鈴コーチから教わった打撃理論を中学3年生の終盤から急速に吸収し、成長を遂げました。高校進学後も打撃で高い評価を受けていたようです。彼の努力は見事で、私もその成長を目の当たりにし、大変うれしく思いました。もちろん、彼自身の頑張りでレギュラーをつかんだわけですが、ポニーで3年間を通して一番成長した選手の1人でした」

館林慶友ポニーでコーチを務める根鈴雄次氏【写真:伊藤賢汰】
館林慶友ポニーでコーチを務める根鈴雄次氏【写真:伊藤賢汰】

障害予防と個々の成長を重視…「スキルをしっかり伸ばし高校へ送り出すことが大切」

「ポニーでやっていた練習を高校でも続けたいが、監督の方針が違って難しい」というOBの声も聞かれる一方、練習を見学に訪れる高校の指導者もいるなど、館林慶友ポニーの指導方法に対しては、さまざまな反応が見られるという。

 館林慶友ポニーでは、オーバーワークによる肩や肘の故障防止に重点を置き、選手が怪我をせず、野球を楽しみながら成長できる環境づくりを目指している。ヘッドコーチは怪我防止を第一に考え、投手のローテーションや交代のタイミングを慎重に計画し、試合では選手たちが自由にプレーできるよう、ノーサインで進める。失敗しても次に生かせるよう、積極的なプレーを促す指導を心がけている。

 もちろん勝利は目指すものの、勝利を最優先にした選手起用は行わず、選手一人ひとりの成長を重視。入団時から卒業までの間に、どれだけスキルを伸ばせるかに重点を置いている。

「中学野球は、わずか2年半という短い期間しかありません。集団練習に多くの時間を割くよりも、個々のスキルをしっかりと伸ばし、高校野球へ送り出すことが大切です。そうして選手の能力が向上すれば、結果としてチーム全体の力も高まっていくと考えています」

 館林慶友ポニーの取り組みは、他の指導者にとっても参考になる部分が多い。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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