“鳴り物入り”のはずが…高校野球で伸び悩む理由 軟式→硬式「移行期」で見直す土台作り

小学生は「試合しかしていない」…関メディベースボール学院が取り組む中学1年の基礎固め
中学生になり軟式から硬式に移行した球児たちは、どのような点に注意すればいいのか? ボールの違いによる打撃、投球、守備への影響や、成長期による怪我のリスクなどもある。中学硬式ポニーリーグ「関メディベースボール学院中等部」(以下、関メディ)の井戸伸年総監督が、高校野球で活躍するための中学での「育成法」を紹介する。
今春、関メディには68人の新入部員が集まり、3学年で計183人の大所帯となった。中学の硬式野球部では「多分、日本一の部員数」と井戸総監督自身も驚くほど。大所帯になればなるほど出場機会の減少が懸念されるが、ポニーリーグには同じ大会に最大4チームがエントリーできる制度があり「むしろ沢山のチームが作れる」とメリットを口にする。また、選手だけでなくスタッフも40人を超えており、目の行き届いた指導も可能だ。
そんな中、井戸総監督が指導のなかで細心の注意を払っているのが、多くの選手が軟式から硬式に移行したばかりの新1年生の存在。軟式球に比べ硬式球は約15グラム重く、肩肘の故障に繋がるため投球や送球を繊細に行っていく必要があるからだ。
「小学生は年間を通じて大会が多いです。言い方はあれですが『試合しかしていない選手』がほとんど。キャッチボールの基本や、打撃や守備でもボールに対応できていない選手が目立ちます。まずは基本から見直し、秋頃までは野球ができる体つくりをテーマにしています」

体格差で勝負できる期間は短い「現段階の筋量で100%の力を使えるフォーム作り」
4月の入部から7月までは主に捕球とスローイング作り。トレーナー陣を中心に、田中将大投手(現巨人)やダルビッシュ有投手(現パドレス)を育てた佐藤義則コーチ、元阪神の伊藤敦規コーチらが、負担の少ない投球や送球を徹底する。胸郭回りのストレッチなど技術習得に必要な体の使い方を覚え、月1回の紅白戦も入れながら実戦感覚も養っていく。
小学生から中学生までは、身長や体重など個々の体力差があるだけに焦りは禁物だという。体の大きさだけで勝負できる期間は短く、高校に入ると“逆転現象”が起こりやすい。中学時代に活躍しながらも、鳴り物入りで高校に入学した有望選手が伸び悩むのはよくある話だ。
「投球も打撃もリスクの少ないフォームを作りつつ、いかに出力を出せる形を作れるかが大事。現段階の筋量で100%の力を使えるフォームができれば、体が成長しても変える必要はありません。いきなりは難しいのですが、1人ができれば周りも影響され、プラスの輪が広がります」
関メディではいくら力がある1年生でも、2、3年生のチームに“飛び級”させることはない。高校入学と同時に活躍できるように、選手を育成していく。今年でチーム創設11年目を迎えたが「当初はゆっくり過ぎて大丈夫か? と思うこともありましたが、これまで選手たちは(他チームの)比較対象を抜いています」と井戸総監督。野球人生を長く過ごすため、小学生から中学生の“移行期”は十分な注意が必要になる。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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