NPBジュニアで重宝される“マルチ能力” 中学以降も役立つ…プロが注視する「送球の意識」

オリックスJr.の山本和作コーチが明かす…複数ポジション守れる選手の重要性
全国の逸材小学生が集う「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」が、今年も12月26日から29日まで、神宮球場と横浜スタジアムで開催される。各球団はセレクションを実施してメンバー16人を選考し、少数精鋭のチーム作りに着手する。今回は「オリックス・バファローズジュニア」の山本和作コーチに、指導者が選手に求めるポイントを聞いた。
山本コーチは2008年育成ドラフト3位で巨人に入団した。2012年オフにオリックスへ移籍し、2013年には自己最多の96試合に出場。内野の全ポジションに加え、外野もこなすユーティリティとして活躍した。引退後は母校・大阪経済大学の監督を務め、2023年にオリックスの球団職員に。昨年からジュニアチームのコーチも務めている。
これまで、大学生を指導してきた山本コーチは「今の小学生は全てのレベルが高い。僕たちの時代ではありえないぐらい」と、学童野球のレベルの高さに驚きを隠せない。飛距離、球速など技術はもちろんだが「野球への取り組み、意識の高さは目を見張るものがあります」と、NPBジュニアに選出された選手たちの共通点を口にする。
地域でトップレベルの選手が集まるセレクションを突破するのは容易ではない。オリックスジュニアでも約300〜400人の応募があり、合格者はわずか16人。優勝するには4日間を戦い抜く必要があり、1日70球の球数制限も設けられている。バランスの取れたチーム作りには、投手を含めた複数ポジションを守れる選手が必要になってくる。

ユーティリティとして活躍するには…求められる「スローイング」
山本コーチは昨年の選考や試合を振り返りながら「1つのポジションだけでは出場機会も減ります。能力の高い選手ばかりなので、今の段階から色々なポジションを守ることができれば、上のカテゴリーでも必ず生きてきます」と断言する。“便利屋”になる必要はないが、複数のポジションを守れる能力は、持っておきたい要素の1つだ。
ユーティリティとして活躍するために、大切になるのは「スローイング」だという。野手ならアウトを奪い、投手ならストライクを取る。当たり前のことだが、捕球できても送球や投球に不安があればアウトを取る可能性は格段に低くなってしまう。
「スローイングができれば、ある程度は守れます。気をつけてほしいのはポジションによって“送球の意識”は変えないこと。例えば三塁、遊撃なら長い距離の強い送球が必要ですが、二塁手は短い距離なのでショートスローなどが多くなります。ここで小手先だけで投げないこと。小さく投げるのもうまさですが、能力を伸ばすことが大切。まずは長い距離を投げること。どのポジションでも強い送球ができる。そのような姿を見せてほしいですね」
打順やポジションにより役割は変わるが、小学生の時期から固定観念にとらわれる必要はない。「もちろん日本一を目指しますが、我々もプロに繋がる選手を見つけていきたい」と山本コーチ。NPBジュニアトーナメントを経て、子どもたちが大きく羽ばたいていくことを願っている。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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