球速アップ阻む“遅い運動” メニューは100種類超…130キロ中学生を育てる米国式練習

創部2年で全国出場…「武蔵川越ブレーブス」を率いる山本斉氏の選手育成術
昨年1月に設立された中学硬式野球「武蔵川越ブレーブス」が、18日に開幕する「マルハングループインビテーション 大倉カップ 第51回全日本選手権大会」に初出場する。創部2年目での快挙を導いた山本斉(ひとし)監督は独学でトレーニングの知識を深め、米国式の指導で選手を育成している。1年間で球速が20キロアップした投手もいるという。
山本氏は山形・酒田南高から、2007年高校生ドラフト3巡目でヤクルト入り。現役引退後は中学硬式「東京神宮シニア」のコーチや監督、千葉の強豪・銚子商で投手コーチを務めるなどし、武蔵川越の初代監督となった。トレーニング理論はインターネットや書物などで学び、自らに落とし込んだ。
トレーニングメニューは100種類超。チームのホワイトボードにはメニューの名前がずらりと書かれている。「重視しているのはメカニック。トレーニングの質は高いと思います。育成に関しては自信を持ってやっています」と語る。
投手育成で重視しているのは“遅い運動”をさせないこと。長距離走や重いものをゆっくり動かすメニューはないという。走るのであれば、10~20メートルなどのショートダッシュが中心。「投手は瞬発系のメニューがほとんどです。動きの遅い運動をやっても、スピードは上がりません。スクワットなども重さとだけ勝負としていては、瞬発系の力が上がりません。練習でもいかに早く体を動かすかが大事だと思います」と力を込める。

ティー打撃は正面からトス、ノックよりも“分解ドリル”で守備力アップ
目安として掲げているのは、中学を卒業するまでに130キロ台を投げられるようにすること。「正しい体の使い方ができれば、さほど難しいことではないと思います。必ず投げられます。1年間で球速が20キロ上がった選手もいます」。
打者には振る力と再現性を求める。2人1組で行うティー打撃では、柵を置いて必ず正面からトスするようにしている。斜めからトスするやり方が一般的だが「絶対にやりません。試合では正面からボールが来ますから」と説明。ロングティーでは同じ打球を打ち続ける重要性を選手に説く。「遅い球に対して再現できなかったら速い球は打てません。ロングティーで同じところに打ち続ける能力を養ってほしいですね」。
守備練習では、基本的にノックは行わない。捕球、握り替え、ステップなど動きを分解してのドリルが主だ。「距離感や打球の感覚は、打撃練習で守って養います。まずは足の使い方やグラブの出し方などを覚えることを主眼に置いています」と説明する。
米国式の“革新的”取り組みにより、短期間で実力を上げた選手たち。初の全国舞台でどんなパフォーマンスを見せるか、楽しみだ。
(片倉尚文 / Naofumi Katakura)
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