左投げ小学生を“捕手コンバート” たとえ不利でも…常識を覆す学童指揮官の狙い

神戸福田ベースボールクラブ・東元奨吾【写真:橋本健吾】
神戸福田ベースボールクラブ・東元奨吾【写真:橋本健吾】

神戸福田ベースボールクラブで主将&4番を務める左投げ捕手の東元奨吾

 小学生は型にはめず、個性を生かし大きく育てていく。指導者のエゴでポジションを決めず、将来を見据えて多くの“経験値”を身につけさせる。「第22回オリックス・バファローズCUP2025 少年少女軟式野球大会」決勝トーナメント進出を果たした神戸福田ベースボールクラブ。チームを牽引したのは、主将で4番を務めた左投げ捕手だった。

 神戸福田ベースボールクラブは神戸市垂水区にある福田小学校を拠点に活動し、区域や校区など関係なく入部可能な少年少女野球チームだ。7月12日に行われた兵庫第7ブロック代表決定戦では、春風サンダースに4-2で勝利。先発した背番号「2」の女子右腕・谷上由奈(6年)を捕手の東元奨吾(6年)が懸命にリードし、勝利を掴んだ。

 強肩強打の捕手はよく耳にするが、「左投げ」となれば話は別だ。本塁が追いタッチになり三塁への送球も難しく、一般的に左投げは不利とされている。それでも、家城透監督は「元々投手だったのですが、うまくいかない時期があった。右だろうが左だろうが、本人が気持ちよくプレーできるところを守らせたい」と口にする。

左利きながら投手を懸命にリードする扇の要だ【写真:橋本健吾】
左利きながら投手を懸命にリードする扇の要だ【写真:橋本健吾】

 チーム事情よりも将来を見据えたコンバートだ。配球を覚えることで打撃に繋がり、投手に復帰した際にも投球の幅は広がる。また、他のポジションよりも足腰を使うため、身体機能の向上も見込める。中学、高校とカテゴリーが上がれば、左投げ選手は主に投手、一塁、外野を守ることが多くなるが、「野球脳を含めて将来、絶対プラスになる」と指揮官は考えている。

神戸福田ベースボールクラブ・家城透監督【写真:橋本健吾】
神戸福田ベースボールクラブ・家城透監督【写真:橋本健吾】

家城透監督「可能性がある限りやらせたい」

「野球を覚えるには、キャッチャーが一番見える位置にいると思う。いろんな状況が見えるので、この時期に吸収してほしい。彼が中学で硬式やりますという時に、左のキャッチャーで結果を残したらそれも1つ。ポジションが変わって結果を残したらそれも1つです。できることは今、やらせてあげる。可能性がある限りやらせたい」

 今大会の予選では右腕・谷上を中心に投手を起用した。男子に比べると球速は劣るが、四球を出さない制球力を武器に凡打の山を築いた。昨年まではなかなか出場機会に恵まれなかったが、家城監督は「普段から努力する姿を見ていました。『どこで出られるかな?』と。自滅はないので、周りが守ってあとは打てばいいと。そういうチームになりましたね」と振り返る。

 投手は気持ちよく投げ、野手はしっかり守る。盛り上がった状態でベンチに戻り、次のリズムを作っていく。守備の大切さを認識させることで、チーム内での競争意識も生まれてきたという。

 決勝トーナメントは8月19日に始まる。兵庫だけでなく大阪、京都など、予選を勝ち上がった関西の強豪チームとの負けられない戦いが続く。選手たちの“輝ける場所”を提供する、家城監督の選手起用にも注目したい。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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