真夏の連戦で“体力ダウン”を防ぐ方法は? 山盛り白米は「無駄」も…あえて大量に摂る理由

青森山田シニア・中條純監督が重視する「体重」の変化
健康のバロメーターは「体重」――。2021、2022年の日本選手権で優勝した中学硬式野球の強豪「青森山田リトルシニア」の中條純監督は、体調管理の一貫として選手の体重を定期的にチェックしている。体重を維持するため、寮生には朝食で茶碗2杯分、夕食で茶碗3杯分の白米を食べるよう指示するなど日頃から大量の食事を摂らせており、普段と環境の異なる遠征先でも食事量は減らさない。そこにはある“意外な理由”がある。
青森山田シニアは7月中旬、韓国・華城市で初開催された中学生世代の国際大会「京畿道アジアカップ野球大会(U15)」に参加した。宿泊先のホテルの朝食会場には、山盛りの白米に食らいつく選手たちの姿があった。1週間の滞在期間中、毎朝広がるその光景は、食べて体を大きくするいわゆる「食トレ」に見えるが、中條監督いわく狙いはそれだけではないという。
「夏の連戦が続く時期は、疲れとともに食が細くなって体力も落ちてしまう。そうならないよう、普段からたくさん食べてそれを『当たり前』にしています。正直、あんなに食べる必要はないし、食べたものを消化するために体力を使うという意味では無駄なんです。ただ、それ以上に体重を落とさないことが大切だと考えています」
1週間でも食事量が大幅に減ると、夏場の食事量にも影響が出てしまう。健康のバロメーターとも言える体重を維持するための策だ。もちろん栄養面にも気を遣っており、バイキング形式の食事ではバランス良くメニューを選ぶよう呼びかけ、不足する栄養素はサプリやプロテインで補っている。

国内遠征はバス移動、車中泊…耐性つけるための“訓練”
「あえて負荷をかける」のは食事だけではない。例えば、移動。青森から関東や関西に遠征する際は、基本的にバスで移動する。長い時は10時間以上かけて目的地に向かい、車中泊をして翌朝の試合に臨む。これも「当たり前」を作る作業だ。
京畿道アジアカップ野球大会(U15)の遠征でも、大会前日は青森を早朝に出発し約4時間かけて仙台空港に到着。その後飛行機で韓国へ渡ると、仁川国際空港から1時間以上離れた室内練習場にバスで直行し、気温が35度を超える猛烈な暑さの中で打撃練習やアジリティトレーニングを行った。
選手にとっては過酷なスケジュールかと思いきや、中條監督は「普段から“劣悪な環境”でも試合をする訓練をしているので、彼らからすれば楽な移動ですよ」と不敵な笑みを浮かべた。海外が初めての選手も多い中、全員が練習開始と同時に威勢良く声を出し動き回れるのも納得がいく。困難に打ち勝つための耐性をつけるには、一見過酷にも思える「訓練」が必要なのかもしれない。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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