守備動作は低学年から「片手がいい」 固定観念で後悔…しなやかさ習得「中学からは難しい」

「久留米フューチャースターズ」で指導する流大輔氏(左から2人目)【写真:本人提供】
「久留米フューチャースターズ」で指導する流大輔氏(左から2人目)【写真:本人提供】

福岡・久留米市で野球塾「SSBA」と中学軟式野球チームを運営する流大輔氏

 野球の上達はスキルを磨くのはもちろん、チームプレーの規律の中で、どう“個の感性”を生かせるかが大切だ。福岡県久留米市で野球塾「Shootingstar baseball academy(SSBA)」を運営する流大輔さんは、一人ひとりの可能性を伸ばす塾での指導とともに、中学軟式野球クラブチーム「久留米フューチャースターズ」の代表兼監督として、組織の中での協調性や役割分担の大切さも子どもたちに伝えている。「奥深くまで突き詰めている」という守備指導へのこだわりとともに、話を聞いた。

 流さんは福岡・祐誠高から2008年に独立リーグの高知ファイティングドッグスに入団。2011年には33盗塁で盗塁王を獲得するなど、俊足の二塁手として活躍した。引退後の2015年に「SSBA」を立ち上げ、2021年には「久留米フューチャースターズ」を創設。ソフトバンク・牧原大成内野手の自主トレでの練習パートナーを務めるなど、小・中学生を中心に幅広い年代の指導に努めている。ちなみに弟の大(ゆたか)さんはラグビー日本代表でW杯に2度出場した名スクラムハーフだ。

「早い段階で実戦的な動きを身に付けていれば、もっと上のレベルに行けたのではないか」。その“後悔”が、現在の指導方針につながっているという。小柄で足の速かった流さんは、打撃ではバットを短く持ちゴロを転がす役割を求められ、内野守備でも「エラーをしない」堅実さを心がけてきた。いわば固定観念に縛られた考え方を変えてくれたのが、高知時代の恩師、当時監督の定岡智秋さん(元南海)だった。

「ダイエー時代にコーチとして川崎宗則さんらを育てられた方ですが、僕のことを『真面目すぎる』と言われました。小柄な俊足タイプでも、力をつけて、長打を狙える打ち方やポイントを覚えなければいけないし、正面のゴロを逆シングルで捕りにいってもいいと。厳しい方でしたが、積極的にいってのミスは咎められず、エラーも年々減っていきました。可能性をどんどん広げてくださいました」

 そうした経験から、早い段階から能力を伸ばす指導にはこだわりを持つ。現在「SSBA」では約100人の子どもたちを教えているが、専門の内野守備については「奥深くまで突き詰めています」と自負。逆シングル捕球やジャンピングスロー、グラブの網で捕るプレーなど、より実戦的なプレーを小学校低学年のうちから積極的にトライさせる。

「守備は『両手で捕るのが基本』と言われますが、僕は野球の入り口から片手の方がいいと思っています。野球塾で10年間教えてきて感じますが、関節を柔らかく使って下から素早く投げるような動作も、中学生の段階で教えてもスムーズにできるようにならないんです。小学生の早い段階からやっておけば、いろんなパターンの動作ができるようになり、中学生年代で体ができてくると、そこに強さと精度が増していきます」

野球塾とチームで個々の技術と規律を選手たちに伝えている【写真:本人提供】
野球塾とチームで個々の技術と規律を選手たちに伝えている【写真:本人提供】

「3か月もあれば十分、硬式に対応できる」…中学生にとっての軟式のメリット

 個の技術を伸ばす一方で、野球はあくまでも団体競技。流さんは「SSBA」と並行して「久留米フューチャースターズ」を立ち上げ、中学生にチームプレーの大切さも伝授する。大分・明豊や地元の西日本短大付など高校野球の強豪校にも選手を送り込んでいる。

 硬式ではなく軟式チームにしたのには理由がある。そもそも、硬式の高校野球を目指す中3に向けたクラスを毎年9月に開講していたのがきっかけで、そこで「3か月もあれば十分に、軟式から硬式に対応できるようになる」と実感したからだ。軟式のメリットについて、次のように語る。

「何よりも圧倒的に怪我のリスクが少なく、思い切ったプレーをさせられるのが大きい。そして軟式のロースコアの戦い、1点を取る難しさというのはものすごく勉強になるし、走塁も磨かれます。(飛ばしにくい)軟式で打てていれば硬式でも十分打てますし、高校の監督さんからは、軟式出身は伸び率が高い子が多いという声も聞かれます」

 43人が所属するチームでは、独立リーグまで戦った経験やNPB選手と関わる中で培ってきたハイレベルなプレーを選手たちに施す。それだけでなく、挨拶や整理整頓など「スポ根的なところも残しています」。全選手の通知表も必ず確認して生活態度をチェック。成績の良し悪しを指摘するのではなく、「一生懸命取り組む姿勢は学校生活でも大事。それは誰でもできること」と伝えたいからだ。

「正直、野球塾だけをやっていた頃は『(所属チームで)何を言われても、どんどんやっちゃいなよ』と言うこともあったのですが、今では監督の立場や考え方も理解できるようになり、指導の幅が広がりましたね」と流さん。様々な感性を磨ける野球塾と、協力・連係を学べるクラブチーム。両方のメリットを生かしながら、監督・コーチの要望に応じて可能性を発揮できる選手を増やしていく意気込みだ。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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