ライバル同士が異例の“合同出場” 退職警察官の英断…金銭的負担を解消した「独自ルール」

南長崎マリナーズの浦根監督【写真:橋本健吾】
南長崎マリナーズの浦根監督【写真:橋本健吾】

南長崎マリナーズは三和リバーフィールズとの合同チームで大会に出場

 ライバルでも一緒に全国大会を経験しよう――。9日、10日に兵庫・淡路島で行われた少年野球大会「ミズノベースボールドリームカップ・ジュニアトーナメント1stステージ」に長崎代表として出場した「南長崎マリナーズ」は、単独チームではなく同じ市内の“ライバル”との合同で臨んだ。浦根(うら・はじめ)監督は「たくさんの子どもたちに素晴らしい経験を積んでほしい」と、あえて合同チームとして出場した理由と、実現を可能にした大会側の配慮について語った。

 予選を勝ち抜いて長崎代表として出場した南長崎マリナーズは、三和リバーフィールズとの連合チーム。同じ長崎市内で、地区は違えど互いに実力あるチーム。単独出場の可能性もあったが、浦監督は予選が始まる1か月前の1月に「一緒に全国に行きませんか?」と、三和リバーフィールズの監督に提案。2月に合同練習をスタートさせ、全国大会の切符を掴み取った。合同チームとして出場する理由は単純明快だった。

「1人でも多くの子どもに全国の経験をしてほしい。手と手を取ってじゃないですが、素晴らしい球場と、普段は戦うことができない相手ばかり。こんな素晴らしい環境で野球ができることは中々ありません。今回は人数の制限もあるので5、6年生だけになりましたが、みんなが楽しんでプレーしていましたね」

 浦監督は愛知県出身で、1989年から長崎で警察官として交番勤務や刑事などを務め、2001年に南長崎マリナーズを創設。遠方に異動になっても指導を続けていたが、2019年に両立は難しいと退職を決断し、チームの指導に専念するようになった。1人でも多くの子どもたちの成長を願い、今回、ライバル同士の合同チーム結成を実現させた。

ユニホームではなくTシャツでプレー「負担の少ない形でいければ」

 合同チームならではの問題点も解消した。2つのチームが1つになればユニホームを新調する必要があった。金銭的な負担も生まれるが、ミズノドリームカップならではの“ルール”に助けられた。

 この大会は「ミスを怒らず、みんなで助け合う」ことを理念とし、金銭的な部分で野球を諦める子どもたちをなくす活動も推進している。規定には「ユニホーム・帽子・ストッキングが揃っていなくても出場可能」とあり、南長崎マリナーズは紺色にワンポイントのTシャツを着用。選手たちは“即席ユニ”でグラウンドを駆け回った。

「ミズノさんの取り組みはいいですよね。本来なら別々のユニホームでもよかったのですが、親御さんから『一つになるために一緒に揃えたい』という声もあったので。それなら負担の少ない形でいければということで。このTシャツ、すごく安いんですよ。他のチームのユニホームはカッコいいですけど、僕らはアンダーシャツにTシャツですから(笑)」

 浦監督の教え子には強豪校に進み、甲子園に出場した選手も多くいる。「自分が作ったチームを見られるというのが一番の楽しみ。中学、高校と長く野球を続けてくれれば嬉しいですね」。長崎の子どもたちを四半世紀見守ってきた指揮官は、これからも愛情を持った指導を続けていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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