「なぜあんな言葉を」…指導者の後悔 罵声なき球界へ、学童で学ぶ“感情コントロール”

「ミズノベースボールドリームカップ」の開会式の様子【写真:橋本健吾】
「ミズノベースボールドリームカップ」の開会式の様子【写真:橋本健吾】

ミズノベースボールドリームカップで昨年から実施する「アンガーマネジメント講習」

“ミスを怒らず、みんなで助け合う”大会として5年目を迎えた少年野球大会「ミズノベースボールドリームカップ・ジュニアトーナメント1stステージ」が、8日~11日に兵庫・淡路島で行われた。昨年から参加チームの指導者に向けて取り入れたのが「アンガーマネジメント講習」。主催者のミズノ社員で、大会の全体統括を担う古谷幸平さんは「形あるものを取り入れたかった」と意図を語る。

 アンガーマネジメントとは、怒りの感情を客観的に理解、コントロールするためのスキルで同大会の理念と共通する。大人の罵声怒声などで子どもたちが萎縮せず、のびのび楽しくプレーできる環境作りが求められている今、指導者の知識のアップデートは必要不可欠だ。

 大会創設時から運営に関わる古谷さんは、過去4大会を振り返り「1、2年目はイエローカード(指導者が怒った際に出すカードで2枚受けると退場)が2、3回は出ていました。少し気になる部分はありましたが、昨年はゼロ。大会の思いは浸透してきたと思います。でも、選手や指導者の方に届いてるかどうかは分かりませんでした」と語る。ただ、“ミスを怒らない”ためにはどうしたらいいのかという思いを常に抱いていたという。

 そこで、昨年から日本アンガーマネジメント協会の力を借り、開会式にプロの講師を招き本格的な勉強会を開催することに。怒りが生まれるメカニズムや、選手との良好なコミュニケーションの取り方など、約1時間の講習では各チームが情報共有し、これまでの指導を振り返っていた。

講習に参加した蒼開女子硬式野球部の井出監督(中央)【写真:橋本健吾】
講習に参加した蒼開女子硬式野球部の井出監督(中央)【写真:橋本健吾】

女子野球・蒼開高の監督も参加「怒ることの本当の意味って何なのか」

 講習には大会に参加していない指導者の姿もあった。地元・蒼開高で女子硬式野球部を率いる井出麻由佳監督だ。今夏の全国高校女子野球選手権大会でベスト16入りしており、今回はボランティアとして大会をサポートしたが、「チームを作る上で、いつも期待とか愛情と思って怒ることが多い。怒ることの本当の意味って何なのか。そういう疑問もあり今日は参加させてもらいました」。プロから学ぶ貴重な機会を逃すまいと自ら足を運び、熱心に耳を傾けていた。

 野球を含めスポーツには勝敗がある。チームを勝利に導くために、つい厳しい言葉を口にしてしまうことがある。だが、時間が経てば「なぜあんな言葉を……」と、後悔する指導者は多いという。子どもたちを成長に導くのが指導者の役目。一方的な考えを押し付けるのではなく、選手の考えを理解した上で、リスペクトし合うことが大切になってくる。

 指導法のアップデートを願う古谷さんは「ちょっとでも指導者の皆さまのヒントになれば。実際にアンガーマネジメントを学んでもらい、『イラっとした時にはこうしたらいいんだよ』という所まで作ってあげる。そうすることで、この大会理念を浸透させて野球界を変えるところに繋げたいと思っています」。信念を持ち、今後も大会を運営していく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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