屈辱の7失点「このままではいけない」 決意の“転身”…中学軟式V左腕の光る投球術

作新学院中・亀山季哉【写真:小池義弘】
作新学院中・亀山季哉【写真:小池義弘】

「全日本少年軟式野球大会」初優勝…作新学院中のエースは“変則左腕”

「柔よく剛を制す」という投球だった。8月10日から15日に横浜スタジアムで開催された、中学軟式野球の日本一を決める“中学生の甲子園”「第42回全日本少年軟式野球大会ENEOSトーナメント」で初優勝した作新学院中のマウンドにいたのは、エース左腕の亀山季哉(ときや)投手だった。星稜中筆頭の好打者・服部成投手を二飛に打ち取ると、駆け寄るチームメートと勝利の味を噛み締めた。試合を決めたのは4番・西原壮雄(そう)捕手が放った7回表の左越え2ランだったが、流れを引き寄せたのは、亀山の見事な投球術だった。

 4回裏無死二塁、先発の松本鶴寿投手からバトンを受けると、星稜中の4番・竹山舜内野手のバントを処理し、二塁走者をアウトに。後続を退け、先制を許さなかった。その後走者を出しながらも、夏前から取り組んできた新投球フォームで見事にタイミングを外し、要所を絞める。準決勝までの3試合で21得点していた星稜中の強力打線を抑え込み、勝利を手繰り寄せた。

 雪辱を果たす思いで登ったマウンドだった。3月の「全日本少年春季軟式野球大会」では、同じく星稜中と対戦し5回途中7失点で降板。「このままではいけない」と、増渕洋介監督、正捕手の西原と試行錯誤してフォーム変更に取り組んだ。

ゆったりとしたフォームからボールを投げ込む【写真:磯田健太郎】
ゆったりとしたフォームからボールを投げ込む【写真:磯田健太郎】

「前はオーバースローの一般的なフォームだったんですが、相手から見て打ちづらい投手になることを第一に、ゆったりとしたフォームからボールが来る感じを目指しました」と、意図を語る。ワインドアップから軸足(左足)を踏み込んで即反動をつけて投げる。軸足をゆっくり踏み込んで沈み込ませ、右足でタメを作って投げる。軸足を踏み込む前に少し長くボールを持つ……。左腕をできるだけ長く体で隠しながら、1球1球“間”を変えて投げ、打者を料理した。

 大会を通じ24回1/3を投げ、許した失点は僅かに1。防御率は0.37。直球は130キロ程ながらも、着々と打たせて取りアウトを奪った。「自分たちで主体的に考えて行動することをチームで大事にしています」。決意のフォーム変更で掴んだ日本一。これからもたくさんの勝利や功績を積み重ねていくに違いない。

(磯田健太郎/Kentaro Isoda)

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