自主性だけでは「勝てない」 伝統破壊に葛藤も…仙台育英が模索する“令和の根性野球”

仙台育英の須江航監督が語った“主体性と自主性”
第107回全国高校野球選手権に2年ぶり31度目の出場を果たした仙台育英(宮城)は3回戦で沖縄尚学に敗れたが、延長11回タイブレークの大激闘。2022年に優勝、2023年に準優勝に輝いた同校は今年も鮮烈な印象を残した。須江航監督は葛藤を抱えながらチーム作りを進めてきたことを明かした。
4季ぶりに甲子園に戻ってきた仙台育英。沖縄尚学に敗れた直後、須江監督は「(甲子園出場への)時計の針みたいなものがこれで動きだした」とナインに感謝しつつ、苦しみ悩み続けたチーム作りについて振り返った。
「近年、優勝や準優勝という成果が出た中で、長い歴史で育んできたことや、その中で良しとされている伝統を全部壊して、もう一回ひとつずつ厳しくやろうと舵を切ったのは彼らなんです」。監督から“変革”を強制することはせず、何度も何度も「本当にそれでいいのか」と自身に問いかけながら選手を見守った。
須江監督が力を込めて語ったのは主体性と自主性について。「綺麗ごとではなく、主体性と自主性を重んじることを大事にしているんですけど……」。自ら考えて実行する力を重視しているが、一方で「それでは、本当に勝負に勝つんだという根性というものが生まれないんです。歯を食いしばって頑張らなきゃいけない」と根性の重要性についても触れた。

「新しいチーム運営ができるきっかけになった」
“根性”と表現した精神力について「監督やコーチ、大人から言われて磨けるものではなく、自分自身に対する厳しさを出していかないといけない」と説明する。とはいえ、「大人でもできないですね。大人でも年々会社のルールが厳しくなったり、色んなことに窮屈さを感じたりしたら頑張れないじゃないですか。不満にしかならない」とその難しさも分かっている。
だからこそ「主体性や自主性だけではなかなか人は育たない」。自分に厳しくすることは難易度が高いと分かっていながらも、選手にはあえて主体的に動くよう求めてきた。その結果、選手たちは悪戦苦闘しながらも成果を出した。
「(仙台育英はこれから)新しいステージに入っていくと思います。令和の根性野球みたいなものと、令和の主体性みたいなものが混じって新しいチーム運営ができるきっかけになったと思います」。時代が変わる今、新しい形を模索しながら“令和のチーム作り”を進める。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)
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