王貞治氏が絶賛「うまくなる環境がある」 野球振興へ地方行脚…“球都”で目にした光景

8月23日から9月10日まで開催…「球都桐生ウィーク2025」を視察
NPB最多の通算868本塁打を誇る王貞治氏(ソフトバンク球団会長)が26日、群馬県桐生市で開催中の「球都桐生ウィーク2025」を視察した。王氏は今年5月に一般財団法人「球心会」を設立し、自ら代表に就任。数ある日本野球界のプロ・アマ組織の間に“横のつながり”をつくり、野球の普及・振興、少子化対策のため様々なプロジェクトを展開して情報発信するとしていたが、いよいよ具体的に動き出した。
桐生市は野球が盛んな「球都」を標榜しており、8月23日から9月10日まで開催している「球都桐生ウィーク」は、桐生市出身で元西武監督の渡辺久信氏らが参加する“名将対談”、上原浩治氏のYouTube公開収録、プロ野球OBたちが市内のスナックをはしごして野球談議を繰り広げる“スナックスタジアム”など、盛りだくさんだ。2022年に9月10日を「球都桐生の日」と定めたことをきっかけに、市政と民間事業者や一般市民が一体となり、毎年この時期に野球をテーマにした様々なイベントを行っている。
王氏はこの日、まずは小倉スクラッチ・スタジアムで慶大野球部が市内の中学3年生65人を対象に開いた野球教室を視察。その後、場所を移動して中学生硬式野球チーム「桐生南ポニーリーグ」の練習を見守った。
「桐生の野球熱は昔から凄かったが、若い人たちの野球熱は桐生というより、日本の野球を支えていくのではないかというくらいだ。組織もしっかりしている」と桐生市の取り組みを絶賛。さらに「中学生たちの様子を見ていると、われわれの時代のように(指導者に)言われてやっているのではなく、自分の意志でやっていることがはっきりとわかる。目がギラギラしている。この暑い中、あれくらいの思いを持ってやらないと続かないし、上手になりませんよ」とボルテージを上げた。
また、桐生南ポニーが練習で使用している、廃校となった桐生南高跡地には打球速度、スイングスピード、スイング軌道などを測定できる精密機器をそろえた「球都桐生野球ラボ」が設けられており、小学生から高齢者までが利用している。

早実高1年時代のスコアシートと対面「ヒットを打っていたのでホッとしました」
これを見た王氏は「プロでもなかなか、ここまでのことはやっていないですよ。選手たちがうまくなる環境がここにはありますね。日本の少年野球のお手本になると思います」と感嘆。「私自身、いい勉強をさせてもらいました。今日接したことを私からもいろいろな形で発信して、日本中で少年野球をやっている子どもたち、その世話をしている人たちに桐生の現状を伝えられたらいいなと思います」と力を込めた。
85歳となった王氏だが、存在感や知名度は別格。こうして全国の様々な取り組みを視察するだけでも球界に情報が行き渡り、野球振興の一助となるのは間違いない。
そんな王氏が、懐かしさに思わず口元を綻ばせたシーンがあった。「球都桐生歴史館」の一角に、王氏が東京・早実高1年だった1956年に当地で桐生高と練習試合をした時のスコアシートが保存されているのだ。王氏は「7番・投手」でスタメン出場し、投げては5回を投げ、打っては3打数1安打だった。
「ヒットを1本打っていたので、ホッとしました」と目を細めた王氏。「これが残っていることも、桐生のみなさんが歴史を大事にしている証拠ですね」とうなずいた。こうした過去の自分との出会いも、王氏の今後の活動のモチベーションになるかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/