当番なし、送迎付き…“俺様監督”の野球は「もう終わり」 部員100人を実現する二人三脚運営

創部11年、中学硬式野球「横浜都筑リトルシニア」は仙台育英エースを輩出
野球離れが叫ばれる時代に、大所帯の部員数を誇るのには理由がある。8月12~17日に開催された中学硬式野球の日本一を決める「第19回全日本中学野球選手権大会 ジャイアンツカップ」に初出場した横浜都筑リトルシニア(神奈川)は、100人を超える選手数を擁し、高校野球の名門にも選手を送り出している。人気の秘密には、手厚い保護者へのケアと、将来につながる徹底した基礎練習があるようだ。
スタンドを埋めたチームカラーのピンク色が印象的だった。8月12日に東京・大田スタジアム行われた多摩川ボーイズ(ジャイアンツ U15 ジュニアユース、東京)との1回戦、3塁側の横浜都筑シニアの応援席には、控え選手に加えて大勢の保護者の姿があった。競技人口減少などどこ吹く風、一見して“大所帯”とわかるその人気の理由は何か。保護者の1人に聞くと、「“当番”がないのが大きいかもしれませんね」と言う。
2015年創設で、今年が11年目の若いチーム。横浜高出身で就任8年目となる伊藤洋一郎監督は、前任の都筑中央ボーイズ監督時代にジャイアンツカップ8強の実績があり、2023年に現チームを初の全国大会に導いている。
ここ2、3年で部員数がグッと増えたといい、「やはり(平塚市内に)専用グラウンドや(横浜・都筑区内に)室内練習場があるのが大きいと思います。送迎もバスを使ってスタッフが全部やっていますし、基本的には我々と選手たちと二人三脚でやっていくスタンス。その中で、手伝える父兄の方には手伝っていただくという方針です」と語る。
練習でも選手たちの自主性・主体性を尊重しており、保護者とのコミュニケーションも重要視。「やはり今の時代はそれが大事。“俺様”で監督・コーチをしているようでは、もう終わりだと思います」。選手にも親にも“丁寧”な対応が魅力となっている。

基礎的な技術向上を重視…目指すは高校野球で通用する選手育成
技術面では基礎練習を徹底。特にキャッチボールについては、「丁寧に、下半身を使って投げるということは厳しく言っています。正確に投げていけば(野球の)全てが上手くなるよと」。挨拶や礼儀、元気の良さも含めた“高校野球で通用する選手”の育成を掲げ、今夏の甲子園で活躍した仙台育英(宮城)のエース左腕、吉川陽大投手らを輩出するなど、実績を積み重ねている。
多摩川ボーイズとの一戦は、エンドランなど足を絡めた攻撃が光ったものの、終盤のミスが影響して5-7で敗退。「全員2年生と思えない、末恐ろしさを感じた」と相手を認めつつ、「やはり全国レベルの戦いになればなるほど、四球を出す、守備のミスが出る、そういうものが勝敗に直結する。チームを鍛えて勝利を目指しつつ、その中で育成というものも大切にしていきたい」。育成と勝負の両輪で、新たなチームの歴史を築いていく。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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