「男子が500回なら1000回振る」 名門中学で奮闘する快足女子…「勇気もらえた」仲間の存在

中学軟式の名門、作新学院中でプレーする13歳・関柚稀さん
中学野球界指折りの強豪で、長い髪を揺らしてプレーする選手がいる。作新学院中2年生の関柚稀(せき・ゆずき)内野手だ。小学生で野球を始め、女子選抜チームの強豪・栃木スーパーガールズでもプレー。折り紙つきの実力だ。名門でプレーする彼女は、男子に交じってプレーすることを「勇気をもらえる」と語る。どのような思いで日々を過ごしているのか。話を聞いた。
小学2年生から、栃木県小山市の「乙女学童」で野球を始めた関さん。1歳年上の従兄弟も野球をしていたことがきっかけだった。5年生では女子のみの選抜チームである「栃木スーパーガールズ」にも選出。6年生時には、女子学童野球の全国大会「NPBガールズトーナメント2023」で優勝を経験した。「全国大会でバントを決められたのが思い出で、バントは得意です」と語る。
乙女学童には他にも女子選手が複数人所属。先輩の女子選手が中学校進学後もプレーを続けているのを見て「かっこいいなと思った」と、作新学院中の体験会に参加した。作新学院は高等部にも女子野球部が存在し、高校でもプレーを続けられることも、彼女の競技継続を後押ししたという。
入部して約1年半。2年生の夏が終わると、大きな壁が立ちはだかった。“リーダー”への指名だ。作新学院中は選手一人ひとりに様々な“リーダー”が割り振られる。守備、投手、道具、生活、タイムキーパーなど、多様な役割を各々が任され、部をより良い形で運営していく。
女子ながら50メートル走7秒4の快足を誇る関さんは、新チームで“走塁リーダー”に就任した。「嬉しかったけど、自分にできるのかなって不安もありました」と振り返る。しかし、各リーダーが思い思いにチームを動かしていく姿勢に、不安はいつの間にかなくなった。今ではウオーミングアップの1本のダッシュにも意見し、チームの意識を高める。
主将で遊撃手を務める今泉徹太内野手(2年)は「次の塁を狙う姿勢についてチームに浸透させてくれますし、今はコーチャーをしているので、ピッチャーの癖が分かればすぐに情報を共有してくれます」。二遊間を組むこともある“相棒”に信頼を寄せる。

「このまま高校は女子硬式野球部に入って野球を続けたい」
普段の学校生活では女子よりも部員と話すことの方が多いといい、「男子は騒がしくて“子ども”だなと思ってます」と笑顔を見せる関さん。練習中も取材中も笑顔を絶やさない。女子マネジャー陣とも仲が良く、普段は何気ない話や、テストの出来について話し、遠征では同じ部屋に泊まるという。
今泉主将は「明るいし本当にずっと笑顔なので、みんなでいじったり、気が置けない関係です」と、存在感の大きさを語る。分け隔てなく接し、皆で様々な感情を共有するチームメートたち。関さんにとって「作新中野球部は勇気をもらえたり、楽しいなと思えるチーム」だという。
一般的には中学校で男子の体が大きく成長し、パワーで劣る女子選手が対抗することが難しくなる。実際、関さんのかつてのチームメートでも「男の子に交じるとパワーも違うし試合も出れないから(中学校で)続けないという子がいた」という。
寂しさを覗かせながらも、関さんは力強く語る。「男の子の方が上手いから、家に帰ったり学校に来る前に人一倍努力しています。みんなが500回振るなら1000回振るくらい練習しています」。主な練習のパートナーは小学校4年生で野球をしている弟。ランニングや素振りを一緒にしているという。
これからのことを聞くと、「このまま高校は女子硬式野球部に入って野球を続けたいです」と意気込む。未来を語る声には、確かな充実感がこもっていた。
全日本少年軟式野球大会で全国制覇…作新学院中の指導・練習法を紹介!
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(磯田健太郎/Kentaro Isoda)
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