球速アップに直結する「一瞬の爆発力」 意識したい“重要部”…エネルギー出力高める練習術

球速が伸びる選手に共通する体の使い方とは(写真はイメージ)
球速が伸びる選手に共通する体の使い方とは(写真はイメージ)

球速は才能だけで決まらない…中学までの下地作りと高校以降の継続の重要性

 投手の球速アップは多くのピッチャーや指導者にとって重要なテーマだ。しかし、がむしゃらに腕を振るだけでは故障につながるだけで、効率的な体の使い方や専門的なトレーニングが求められる。中学生からメジャー投手まで指導に関わっている専門家たちは、球速が伸びる選手には共通する傾向があり、その鍵は下地作りや体の使い方にあると指摘している。

・球速が伸びる選手に共通する「爆発力」とは具体的にどのような力か。
・体重移動の速度を上げるために、特に意識すべき体の部位はどこか。
・球速向上に直結しやすい「野球に近い」トレーニングとは何か。

 佐々木朗希投手(ドジャース)の中学時代を指導した鈴木賢太さんは、球速が出る投手の共通点を「エネルギーを出す方法を体が知っている」こと、すなわち「爆発力」にあると語る。走力やジャンプ力が高い選手にその傾向が見られるといい、中学時代は高校野球への「つなぎ」と位置づけ、まずは負荷に耐えうる持久力を走り込みで養う。その後、立ち幅跳びやメディシンボール、チューブなどを用いた瞬発系トレーニングで連動性を高め、下地を作る。この下地があるからこそ、投手を細かく型にはめることなく、高校以降でさらに成長できる土台が整うという。

 今永昇太投手(カブス)らを指導する北川雄介トレーナーは、自分の体を理解しコントロールすることの重要性を説く。球速を上げる条件の1つが「体重移動の速度を上げる」こと。ポイントは、体の流れを止めず、「体幹部分を最後まで移動させる」意識を持つこと。これにより球速が5〜10キロ上がる投手もいるという。一般的には下半身で上半身を動かすと考えられがちだが、北川トレーナーは胸や肋骨など質量の重い体幹部を意識し、「体幹も使って足を動かす」ことが大切だとし、技術や理論以上に、長いスパンで継続できる力が求められると語る。

 元ロッテ投手で仙台大の坪井俊樹コーチは、「いかに短い距離・時間で大きな力を出すか」を意識したトレーニングを重視する。具体的には、メディシンボール投げや短いダッシュ、ハイジャンプなど、野球の投球動作に近い瞬発系の練習だ。坪井コーチは、メディシンボールを強く投げられる能力と球速には相関があると実感している。一方で、自身の現役時代には常識だった長距離走は、投手に必要な「12秒間で高いパフォーマンスを出す」体力とは異なるとし、大学生には取り入れていない。指導者も常識を日々更新し、トレンドを理解して導入する姿勢が重要だと述べている。

 球速アップには、専門的な知見に基づいた下地作りや体の使い方、そして野球の動作に即したトレーニングの実践が欠かせない。専門家の指導を参考に、個々の課題に合わせたアプローチを継続することが、将来の飛躍につながるはずだ。

・爆発力とは一瞬でエネルギーを出す力であり、高い走力やジャンプ力に現れる。
・体重移動では、体の流れを止めず、質量が最も重い「体幹」を最後まで前に移動させる意識が重要である。
・メディシンボール投げや短いダッシュなど、短時間で大きな力を出す瞬発系のトレーニングが野球の動作に近い。

(First-Pitch編集部)

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