“時間区切り”で「勝手にテンポ良く」 送球ミスも激減…中学日本一の独創的キャッチボール

今夏“全国2冠”の「東海中央ボーイズ」竹脇賢二監督が考案した練習法
野球の基本中の基本であるキャッチボールは、漠然とこなすだけでは上達しない。中学硬式野球で今夏、“全国2冠”を達成した「東海中央ボーイズ」はユニークなキャッチボールを導入している。塁間の半分以下、約10メートルの距離で捕っては即座に返す練習を繰り返す。Full-Countでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。創部13年目のチームを全国屈指の強豪に育て上げた竹脇賢二監督が、狙いと効果を説明した。
「キャッチボールはなんとなくやっていると、ただのウオーミングアップで終わってしまいます。肩慣らしみたいな感覚です。ゆっくり捕って、投げてと繰り返していると秋から冬にかけては延々と肩が冷えた状態なので怪我のリスクもあります」
東海中央のキャッチボールは、まず至近距離で捕っては返球、すぐに相手も返球してくるので再び捕っては返球とリズムよく投げ続ける。それを1分、3分、5分など時間を決めて行う。
「これだけ動けば体が温まります。近い距離だと肩や肘を痛めるリスクも小さい。そこで握り替え、ステップなどの基本的な体の使い方を覚えます。これができれば応用にも効いてくると思います。これができない、もしくは不十分な状態で色々な種類のキャッチボールを取り入れているチームが非常に多いと感じますが、結果的にスローイングの安定力は身に付きにくいと考えています」
至近距離でテンポ良くキャッチボールを終えると、距離を塁間やそれ以上に延ばして通常のキャッチボールを行う。「先に短い距離でテンポ良くやっているので距離を延ばしても勝手にテンポが良くなります」。至近距離の練習を取り入れる以前は「『意識を高く持ってやろう』と言ってもダラダラしたキャッチボールになっていた」というが、今は「送球の精度も上がってミスが少なくなってきた」と明かした。

「自分たちで見つけて、考えて、工夫する」
翌日に試合がない時は至近距離のハイテンポのキャッチボールを最長8分行うこともあるという。「長い距離で8分もやったら壊れちゃいますけど、短い距離なら肩肘への負担は大きくありません」。とはいえ、体を動かし続けてくれば疲労困憊となる。「意識は半分飛んでいます。でも無意識に体が動くようになります」。まさに狙いはそこだった。
集中してやれば1分でも息が上がる練習。「8分できるんだから、たかが試合での1球はなんてことない、というメンタルに繋げたい。過去に、最後に守り切れずに全国を逃したことがありました。野球はメンタルも大いに関係します。守っていて自信がないと、余計なことを考えてワンバウンドになったり悪送球になったりします」。大事な局面で守備が乱れるのが、勝負弱いチームの典型だといい「最後は強いメンタルと体が反応できるかどうか」と力を込めた。
無意識に動けるように、投げ方を体にしみ込ませるのである。「夏場にやったら猛暑で倒れちゃうので、秋から冬にかけて時間を使ってやっています。8分やれば、選手は『やり切った』という自信も必ずつきます」。
今月27日から開催の「日本一の指導者サミット」に出演予定の竹脇監督は、野球科学を取り入れる一方で「温故知新」という言葉も繰り返す。「昔の人がやってきた練習は正しい。その中で他の人がやれていないことを自分たちで見つけて、考えて、工夫する。そういうことがチームが強くなるためには必要だと思っています」。独創的であり、論理的かつ合理的。東海中央の練習に強さの一端が垣間見える。
中学硬式野球5リーグの“王者”…東海中央ボーイズの指導・練習法を紹介!
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(尾辻剛 / Go Otsuji)
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