軟式→硬式の移行期「野球どころではない」 一変する“5要素”…中学V2監督力説「順番を大事に」

“全国2冠”を達成した東海中央ボーイズナインと竹脇賢二監督(左から2人目)【写真:加治屋友輝】
“全国2冠”を達成した東海中央ボーイズナインと竹脇賢二監督(左から2人目)【写真:加治屋友輝】

今夏“全国2冠”の「東海中央ボーイズ」が実践する中1育成法

 小学生と中学生では、塁間の距離やバットの重さなど野球の質が大きく変わる。中学生になったばかりの選手が戸惑うのは当然のことである。成長期で心身とも大きな変化が出る年代だけに、怪我予防にも細心の注意を払わなければならない。中学硬式野球で今夏、“全国2冠”を達成した「東海中央ボーイズ」の竹脇賢二監督は、入部したばかりの中学1年生の指導について「半年かけて慣れさせています」とじっくり時間をかけていると明かす。

 東海中央には竹脇監督が設立した小学生の軟式野球チーム「東海中央ジュニア」がある。この「ジュニア」でプレーした選手を含め、毎年30~40人が入部してくる。その際、選手と保護者に対して丁寧に説明するという。

「バットの重さや投本間の距離が変わるので、最初からまともにできるわけがないと入部時にしっかり伝えます。それにチームメートがガラッと変わる。変わるのはそれだけではありません。チームメート、指導者、環境、道具、距離に慣れないといけません」

 まずはグラウンドのサイズが一変する。投本間は小学生では所属団体によって定められた距離が異なるが、硬式野球のボーイズリーグでは15.36メートル。中学生以上はプロ野球と同じ距離の18.44メートルとなり、約3メートル延びる。塁間も約4メートル延びる。

 中学生が扱うバットは800グラム前後で、こちらも100グラムほど重くなる。硬式球は小学生と差はないものの、軟式球とは重さも硬さも大きく異なる。「慣れようと思ったら1~2か月では無理です。まず人間関係にも慣れないと、野球どころではない。順番を大事にしていこうとやっています」。

東海中央ボーイズの投球練習の様子【写真:尾辻剛】
東海中央ボーイズの投球練習の様子【写真:尾辻剛】

「集中力が途切れた時に事故や怪我が起こる」

 野球の基本であるキャッチボールも無理はさせない。「いきなり塁間以上は投げさせません。この前まで小学生だったのに長くなった塁間を投げると、どれだけ負荷がかかるか分からない」。10メートルほどの近い距離で、素早い返球を繰り返す練習はするものの、焦らずにじっくりと慣れさせていく。

 半年が経過すると、秋には1年生が出場できる大会が始まる。「決して無理はさせません。でも、慣れさせながら大会に出場する準備も進めます」。レギュラー選手を含む全選手が取り組んでいるのが、手で投げたゴロを捕球する練習。反復練習で基本を習得する。

「高校でも野球をやりたい子が集まってきているので志が高い。ただ、絶対に起こしていけないのは“事故”なんです」。時には冗談を言ってリラックスさせることもあるが、ちょっとした気の緩みで選手同士が衝突して怪我することもある。だから“おふざけ”は許さない。

「試合でも同じですが、基本的には集中力が途切れた時に事故や怪我が起こる。いかに集中力を持続させるかが重要です。だから指導者にも一瞬、ピリッとするような大きい声を出してくれと言っています。緊張感がある中での怪我や事故は、そこまで深刻なものにはなりませんから」

 3学年合わせて100人を超える大所帯。竹脇監督、コーチ陣を含めたスタッフ25人と保護者が選手一人ひとりに目を光らせる。好素材の1年生であっても決して焦らせずに順を追って成長を促す。その繰り返しで東海中央は全国屈指の強豪となっている。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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