目先の打率よりも…小中学生に必須の「フルスイング」 首位打者3人の“共通見解”

角中、土谷氏、青木氏が少年野球の選手たちに説くバッティングの要諦
たくさんヒットを打ちたい、打球を遠くに飛ばしたい……。少年野球において、バットの芯で捉える確実性と、打球の飛距離を伸ばす方法を教えることは、大きな指導の悩みでもあるだろう。ロッテ・角中勝也外野手、元楽天・土谷鉄平氏、元ヤクルト・青木宣親氏ら首位打者経験者たちの指導には、この難題を解く鍵が隠されている。プロ野球で確実性の高いバッティングを見せてきた3人の共通点は、目先のミート力だけでなく、将来的な成長を見据えた「強く振る」ことの重要性を説いていることだ。
・確実性と飛距離を両立させる「素振り」とは、どのような意識で行うべきか。
・なぜ小学生のうちから、当てにいく打撃よりフルスイングが推奨されるのか。
・打球が飛ばない「窮屈なスイング」を修正する打撃ポイントはどこか。
2012年、2016年に首位打者に輝いたロッテ・角中勝也外野手は、野球教室で指導した際に、2種類の素振りを小学生に勧めている。1つは「投手をイメージして振る」もので投球の高さやコースを想定して確実性を高め、もう1つは「何も考えずに強く振る」もので飛距離向上を目指す。どちらも打力向上に欠かせないという。また、多くの子どもに見られる課題として「スイング軌道」と「力の入れ方」を挙げ、小学生のうちはバットのヘッドが下がるのを防ぐため「上から叩く意識」を持つ方が良いと説く。上半身はリラックスさせ、力むのは「下半身」だと説明し、「上手くなりたいなら1日100回でもよいので、毎日バットを振って」と継続の大切さを語っている。
2009年に首位打者を獲得した元楽天の土谷鉄平氏も、少年野球時代におけるフルスイングの重要性を強調する。「当てる打撃は年齢を重ねてからでも身に付けられる」と述べ、子どものうちに自分の体をしっかり使ってスイングできる土台を作ることこそが、将来の強い打球につながると言う。楽天のアカデミーやシニアチームの指導経験からも、タイミングのズレや体のグラつきを気にするよりも、まずは「個々が最も力強く振れるフォームで、大きくスイングする」習慣をつけることを優先すべきだと語る。土谷氏自身も、プロ時代に体のキレが落ちた時こそ、必ずフルスイングする練習を欠かさなかったそうだ。
2005、2007、2010年と3度の首位打者に輝いた元ヤクルト・青木宣親氏は、打撃の質を変える「打つポイント」の重要性を中学生向けの野球教室で指摘した。多くの子どもが「三振したくない」という意識から、ボールを呼び込みすぎてポイントが近くなり、ティー打撃でもフォロースルーの出ない窮屈なスイングになっているという。青木氏は「できるだけ前(投手方向)で打たないと強い打球にならない」と述べ、置きティーのボールの位置を見直すことを推奨。また、構えの姿勢にも言及し、「いかり肩」になるとバットがインサイドから出にくいため、「なで肩」を意識し肩甲骨を下げることで、肘が下がり、ヘッドが立った状態でバットが出るようになるという。
首位打者経験者の指導に共通するのは、目先の確実性にとらわれず、将来を見据えた「強く振る」土台作りの重要性だ。3人が示した具体的な練習法や意識の持ち方は、現場での実践的なヒントとなる。プロの技術を参考に、自身の課題に合った練習を取り入れ、確実な上達へと近づいていきたい。
・「投手をイメージする素振り」と、「強く振る素振り」を目的別に併用する。
・将来的に強い打球を打つためにも、まずは「体全体をしっかり使って振る土台」を作ることが必要である。
・ティー打撃でのポイントを調整し、「なで肩」を意識し、しっかりとフォロースルーを取れるスイングをする。
(First-Pitch編集部)
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