学童野球の窮地を救った“大谷グラブ” 体験会で部員倍増…体現した「野球やろうぜ!」

兵庫「南落合ベースボールクラブ」を救った大谷翔平寄贈のグラブ
部員減少の危機を救ったのは日本が誇るトップメジャーリーガーと、熱い情熱を持った指導者の復帰だった。子どもたちが野球に興味を示し、白球を追いかける――。兵庫の学童野球チーム「南落合ベースボールクラブ」(以下、南落合BBC)を率いる日置真仁監督は、「与えてくれたものを次のカテゴリーに繋いでいく役目がある」と思いを明かす。
南落合BBCは神戸市須磨区の南落合小学校を拠点としているが、校区外の小学校からも多くの選手を受け入れている。須磨区は神戸市9区の中で最も少子高齢化が進んでいると言われており、1990年代は各小学校に学童チームがあったが、現在は廃部や合併したチームが多い。
南落合BBCも例外ではなく部員減少に悩んでいたが、“危機”を救ったのがドジャースの大谷翔平投手から寄贈されたグラブだった。スーパースターからの贈り物に、「これがなかったら本当に厳しかったかもしれない」と日置監督は感謝する。
大谷は2023年11月、日本の小学校にジュニア用グラブ約6万個を寄付。そのグラブが同小学校にも届いた。貴重なグラブを展示する学校もあったが、「うちの小学校ではがんがん使っていました。ノックを受けたり、キャッチボールをしたり。野球を始めるきっかけになった子もたくさんいて。大谷選手の効果は非常に大きかったと思います」と振り返る。

“大谷グラブ”は「野球を始める、興味を持つきっかけを与えてくれました」
2020年に起きたコロナ禍で活動が制限され、競技人口も減少。南落合BBCの部員は当時、全学年で15人ほどだった。しかし、“大谷グラブ”を使用した体験会を経て、今では倍の30人に増えた。大谷が届けた「野球やろうぜ!」のメッセージを体現し、子どもたちは野球への興味を深めていった。
「大谷選手は子どもたちに野球を始める、興味を持つきっかけを与えてくれました。その子どもたちが野球を続けることが指導者の役目。与えてくれたものを継続させ、中学、高校に送り届けることが野球界の未来を作っていくと思っています」
部員が増える中で、“チーム改革”もなされていた。日置監督は2013年にチームを指導した後に一度離れ、2021年に復帰した。「中学、高校で活躍できるような選手を作りたい。小学生で終わりではなく、長く野球を続けてほしかった」と理由を明かす。
野球を楽しむことは大切だが、昨今は「楽しむ」意味を履き違える傾向もある。目標を達成するには、やはり努力が不可欠。「自分を律することができなければ、社会に出た時に通用しない。中学、高校に上がれば挫折することもあります。そこで、どのような行動を取れるかが大事になります」。上のレベルで野球を続けてもらうために、プレーだけでなく社会でも通用する選手を育成していく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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