無駄の多い“長時間練習”から脱却 成長期の故障も防ぐ…「量より質」のチーム改革

中学野球チームに学ぶ“短時間練習”で効率良く成果を上げる方法
中学野球では公立部活動のガイドラインや選手の身体的負担を考慮し、短時間で成果を出す練習法がいま求められている。限られた時間で技術と集中力を高めるには、従来の「長時間こなす練習」からの脱却が大切になってくる。3つの中学野球チームの実践例から、効率化へのヒントを探りたい。
・短時間で試合同様の集中力を作るにはどうすべきか。
・形式的な全体練習よりも、優先して伸ばすべき能力は何か。
・練習のテンポを上げ、質を確保するために大人ができることは何か。
神奈川の軟式チーム「相陽クラブ」の内藤博洋監督は、部活動改革により練習時間が減る中で「濃い密度」を追求している。ウオームアップの時間を短縮し、打球に対して足を使って捕球する「ノックアップ」を導入。「ヨーイ・ドン」の掛け声や、捕球から送球のリズムを「ハイ・ハイ」というオノマトペ(擬音)で共有し、動きのキレを生み出していく。内藤監督は練習を「試合のためのリハーサル」と位置づけ、あえてテンポを速めて心拍数を上げている。のんびりした雰囲気を作らず、常に試合と同じ緊張感を持たせることが、勝負強さにつながるとの見解を示している。
群馬の硬式チーム「館林慶友ポニー」の古島弘三代表は、医師の視点とドミニカ共和国での視察経験から、長時間練習の弊害を懸念している。疲労で思考停止に陥り、怪我のリスクも高まるためだ。同チームではシートノックなどの全体練習を省き、キャッチボールドリルなど個人のスキルアップを優先する。また、中学生は身長が伸びる時期であるため、成長ホルモンの分泌を妨げないよう過度な走り込みは行わない。「練習をこなす」状況を避け、余力を残して帰宅後に自主練や勉強に向かわせるなど、自律を促すスタイルを確立している。
千葉の硬式チーム「京葉ボーイズ」を3度の全国制覇へ導いた関口勝己監督も、「土日も1日4時間くらいの練習で十分」と練習の「質」を重視する。土日中心の活動ながら結果を残す秘訣は、大人の関わり方にあるようだ。打撃練習では監督自らが投手を務め、テンポ良く投げ込むことで、選手の集中力を持続させている。守備練習でも指導者がリズム良くノックを打ち、短時間で高い効果を狙う。また、自宅での入浴中の指先トレーニングや他競技への取り組みも推奨しており、保護者の協力を得てのグラウンド外でのポジティブな声かけが、選手の成長曲線を押し上げると語っている。
実績ある指導者の工夫を取り入れることで、時間はハンデではなく成長の触媒になり得る。大人が環境を整え、密度を高める意識が大切だ。
・オノマトペや速いテンポを活用し、心拍数を上げて短時間で実戦感覚を養う。
・全体練習を削って個の技術向上に充て、過度な疲労を防ぎ、将来に繋がる成長を促す。
・保護者のサポートで、グラウンド外での積極的な自主練習を促す。
(First-Pitch編集部)
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