“安打が出にくい”学童野球でどう得点? バント禁止の「宮本慎也杯」王者が徹底した戦術

「宮本慎也杯 学童軟式野球大会」を制した東京・品川レインボーズ【写真:尾辻剛】
「宮本慎也杯 学童軟式野球大会」を制した東京・品川レインボーズ【写真:尾辻剛】

「第10回宮本慎也杯 学童軟式野球大会」を制した東京・品川レインボーズ

 走塁練習の成果が実って頂点に立った。「アルパインプレゼンツ 第10回宮本慎也杯 学童軟式野球大会」の3位決定戦と決勝戦が11月22日、東京都大田区の大田スタジアムで開催された。決勝戦は品川レインボーズ(東京)が登戸ユニオンズ(神奈川)を5-2で下して初優勝。128チームが参加して3月8日に開幕し、8か月にわたって熱戦が繰り広げられたトーナメントを締めくくった。

 初回にいきなり2失点も慌てない。3回、盗塁やエンドランなど機動力を絡めて一気に4点を奪って逆転。2回以降は相手に得点を許さず会心の勝利を収めた。3度宙に舞った伊江健吾監督は「目標としていた大きな大会で、いい形で終われました。試合を通して選手1人1人が成長してくれたので楽しかったですね」と笑みを浮かべた。

 現在の6年生が4年生だった2023年に「第40回東京23区少年軟式野球大会」の学童低学年の部で優勝。当時も40回の記念大会で「今回も節目の大会なので絶対に獲りたいと思っていた」と納得の表情を見せた。今年は春の大会で敗れて全国大会出場を逃し「子どもたちも心が折れかけていたんです」という。だが、この大会で悔しさを晴らし「自信を取り戻してくれた」と頼もしそうに目を細めた。

 チームで強化を進めるのは走塁。「学童ではヒットはたくさん出ない。とにかく足も絡めて、全員で野球をしようと意識づけしていました」。冬場は走塁練習に1時間かけることが多い。一塁走者のリード、足の運びなどを繰り返し指導。「投球がワンバウンドする手前で大きくリードを取って、第2リードを利用して二塁を狙う練習もしています」と説明した。

 足を絡めた攻撃で徹底するのが「1死三塁の形を作ること」だという。「1点目を取るために、いかに1死三塁を自分たちで作るかは意識しています」。宮本慎也杯ではバント禁止のルールが設定されており、無死一塁なら盗塁を仕掛けて無死二塁とし、打者が右打ちなど進塁打を放つもの1つの例。無死一塁からエンドランをかけて打者が叩きつける間に三塁を陥れる練習もしてきた。

主催する宮本氏とともに集合写真に収まる品川レインボーズナイン【写真:尾辻剛】
主催する宮本氏とともに集合写真に収まる品川レインボーズナイン【写真:尾辻剛】

困難な東京都内での練習場確保…神奈川や千葉に遠征

 1死三塁となれば安打はもちろん、外野への飛球や内野ゴロでも得点の可能性が高くなる。相手の暴投や捕逸、失策でも点が入る。「うまくいかない時もありますけど、基本的に1点取るまでは1死三塁を作りにいくスモールベースボール。その後は好きに打たせています」。決勝戦でも2つのエンドランが決まって逆転に成功した。

 練習の成果を発揮しての優勝だが、練習場所の確保は厳しい状況だという。都会のチームはそもそも専用のグラウンドを持っていないケースが多い。公園やグラウンドを借りられても、練習できるのは1日2時間程度。「ウオーミングアップとキャッチボールだけで、あっという間に30分ぐらい過ぎてしまう」という状況だ。

 土日と祝日しか行えない練習時間をより多く確保するために行動を起こした。「費用はかかったのですが、神奈川や千葉のグラウンドが取れているチームに胸を貸していただいて終日練習したり、合同練習させていただいたりしました。合同練習はいろんなチームのやり方があって勉強になるし、選手も刺激を与えてもらえましたね」。

 バントだけでなく盗塁数も制限された大会でも「やりにくさはなかったです」と胸を張る。普段からこだわってきた1死三塁と、練習の工夫が実を結び、7試合を勝ち抜いた。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

少年野球指導の「今」を知りたい 指導者や保護者に役立つ情報は「First-Pitch」へ

 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY