釧路→札幌を毎週末往復 片道“8時間コース”も…誓った無事故、日ハムJr.主砲親子の覚悟

日本ハムJr.の投打のキーマン…岩野崇來選手と樋口聖良選手
12月26日に開幕する「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」(神宮球場、横浜スタジアム)で北海道日本ハムファイターズジュニアは、14年ぶりの優勝を狙う。投打のキーマンは、最速122キロ右腕の岩野崇來(たから)選手(6年)と、主砲で捕手の樋口聖良(せら)選手(6年)だ。
「フィジカル能力が高い子が毎年1人か2人はいる」と話す球団OBの大塚豊ジュニア代表は、今年の象徴的な選手として岩野くんの名前を挙げた。夕張ダイヤモンドスターズに所属する右腕は、セレクションに挑戦するつもりは全くなかったという。関係者の勧めで受験し、8月中旬からファイターズジュニアの活動を始めると、最速が115キロから7キロアップし、急成長を遂げた。「コーチにいろいろ教えてもらいながら工夫した。毎日体幹を鍛えていることも生きていると思う」と岩野くんは胸を張る。
チームは、初回集合時にストレッチと体幹トレーニングの講座を行い、実施方法を解説した動画を4、5種類ずつ配信した。吉田侑樹監督は「強制はしていませんが、4か月やり続ければ必ず体は変わるし、動きを見れば、毎日やっていたかわかるよという話はしました」と言う。
チーム練習のない平日も毎日地道にメニューをこなし続けた岩野くんは、その成果を実感。「大会では130キロを投げたい」と目を輝かせる。さらに「速い球で三振を取り、チームの勝利を優先してプレーしたい」と意気込む。

選考で重視されたのは「複数ポジションを守れることと走力」
岩野くんの速球を受ける樋口くんは、これまでの試合で4番を務めた。吉田監督が「どれだけ樋口につないで、樋口がどれだけ打ってくれるか」とポイントゲッターとして期待する強打者だ。樋口くんは「責任が大きいのでどうしようかなと思うこともあるけど、練習を積んでいくしかない」と重圧を力に変える。
札幌から300キロ離れた釧路市に住む樋口くんが、ファイターズジュニアの練習に参加するのは容易ではない。最終メンバーに選ばれた時、父・衛さんがまず心に誓ったのは無事故、無違反で毎週末の送迎を完遂すること。高速道路を使っても片道4時間かかり、冬に高速が止まれば峠を越えて8時間かかることも。大雪で道路が通行止めになって帰ることができず、札幌の親類宅に泊めてもらったこともあった。
それでも毎週欠かさず練習に参加した。「最初は緊張して思うようにプレーできなかったけど、長く通ってコミュニケーションが取れるようになり、自分に自信を持てるようになった」と樋口くんは4か月の活動を振り返る。「持ち味の強いスイングと肩を見せたい。みんなで一致団結して楽しくプレーして、優勝したい」と抱負を口にした。
これまでファイターズジュニアは、今年のドラフト会議でDeNAから3位指名された宮下朝陽内野手ら12人のプロ野球選手を輩出している。今年のセレクションで重視されたのは、複数ポジションを守れることと走力。「打撃と守備は、チーム結成してからでも教えられますが、足はもともと持っているものが大きいですから」と吉田監督は説明する。
350人の中から選ばれた精鋭が4か月間活動して出来上がった今年のチームは、泥臭く全員でつないで1点を奪う打線に加え、9人と層の厚い投手陣が特徴だ。本格派の岩野くんのほか、左腕やサイドハンドなど違うタイプがそろう。全員クイックができることも強み。投手出身の吉田監督は「全国大会に出るような強いチームに所属している子は、すでにクイックができていた」と話す。
4か月間一緒に練習することで互いに刺激を受けながら成長を遂げた16人。輝きを放つ時は、目前に迫っている。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)
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