1013人→16人厳選へ導入した「討論型選考」 DeNAジュニアが重視する技術以上の“能力”

2年ぶり王座奪還へ…DeNAジュニア・松井飛雄馬新監督が大切にする“対話力”
精鋭の小学生16人が集まっても、野球の技術だけで勝てるほど甘い大会ではない。今月26~29日に開催される「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」(神宮球場・横浜スタジアム)で2年ぶりの王座奪還を狙う「横浜DeNAベイスターズジュニア」は、松井飛雄馬新監督が初めて采配を振るう。コーチ時代を含め、ジュニア指導は今年で5年目。大切にしているのは、失点に絡むミスを減らし、伸び伸びと力を発揮できるようにするための“対話力”だ。
「まずは守備を大切に、最少失点で抑えて全員で勝つという野球を目指しています。選手の能力を上げるために技術を教えるのはもちろんですが、グラウンドに立って自分たちの能力を発揮できるような形を整えるのが、私たち指導者の役目だと思っています。そのためにも、子どもたちとのコミュニケーションはすごく大切にしています」
今夏、過去最多の1013人の小学生が参加したセレクションでは過去にない選考方法を採用した。実技や面談のほかにグループディスカッションを実施。指定するアウトカウントや走者状況などをテーマに、それぞれの考え方を討論してもらった。
「まずはそのお題に対しての理解力が大切になってきます。もちろん人それぞれで、自分のことをどんどんしゃべる子もいれば、控えめな子もいます。バランスもありますが、自分の考えをしっかりとアウトプットできるかを重点的に見ていました」
ジュニアの活動期間は8月から12月までの約4か月間、土日・祝日のみが基本だ。限られた期間でスタッフや他の選手たちとしっかりと意思疎通を図っていくことが、ミスを防ぐための重要なスキルとなってくる。
「ミーティングをする時もこちらから一方的に話すというよりは、子どもたちに問いかけてどんどん話す機会を与えることを意識していますし、彼らだけでミーティングすることもあります。セレクションからずっとやってきたことが、今の16人に生きていると、すごく感じています」

荒川航輝主将は「冷静に声掛けができる」
その中で、高いコミュニケーション能力を買われ、主将に抜擢されたのは荒川航輝内野手(6年)だ。所属する鶴巻ジャガーズ(東京)では主将ではないが、松井監督から「視野も広く、冷静に声がけができる」ことを評価され大役に任命された。プレーでも内野の要のショートを務め、監督が掲げる守り勝つ野球を体現する。
11月に行われた新イベント「横浜DeNAベイスターズ BAY BLUE FESTIVAL」でも、大観衆の中で決意表明の大役を果たし、横浜スタジアムは温かい拍手に包まれた。
「(決意表明は)少しだけ緊張しましたが楽しかったです。自分の一言でチームが活気づくような、明るいチーム作りを心がけています。キャプテンとしてチームを引っ張り、打撃でも守備でも貢献して日本一を獲りたいです」
取材日の練習試合後も、松井監督はミーティングで一通り話を終えると、16人全員に良かったプレーを挙げ、語りかけている姿が印象的だった。試合中の動きをしっかりと観察し、褒めることで選手たちは伸びていく。決して一方通行で終わらないのが松井流の指導だ。
「僕が小学生当時は、指導者に対して『はい』か『いいえ』でしか答えられませんでしたが、今は自分の思ってくれることを話してくれる子が多いです。私たちもコーチングを学ぶなど、日々アップデートしていかないといけません。もちろんジュニアトーナメントで優勝するという目標はありますが、将来活躍する子どもたちを育てたいという思いが強いです」
今秋のドラフトでは、松下歩叶内野手(法大-ヤクルト)、小島大河捕手(明大-西武)と、OBから2人のドラフト1位が誕生した。ジュニアでの活動が、技術的にも人間的にも成長する場であることこそが、指導者たちの願いだ。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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