技術か潜在能力か…西武Jr.が重視した“数値” 逸材小学生に施した科学的アプローチ

8年連続で西武ジュニアを率いる星野智樹監督「“数値で選んだ子”もいる」
NPB球団などが小学生のジュニアチームを編成し優勝を争う「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」が今月26日から29日まで、神宮球場と横浜スタジアムを舞台に開催される。埼玉西武ライオンズジュニアを率いる星野智樹監督は、今大会出場監督の中でヤクルトジュニアの度会博文監督と並び最長の8年連続の指揮となるが、今年は選手選考段階で「初めての試み」に挑んだという。
今年の西武ジュニアの選考に応募した小学生は約650人。書類と動画による1次選考、実技を見る2次選考、面接や筆記試験、紅白戦などの実戦形式を含む最終選考を経て、9月6日に6年生の出場メンバー16人と5年生のサポートメンバー5人が発表された。
選考段階で筋量、スイングスピード、10メートル走や30メートル走のタイムなどを計測。技術だけでなく、数値に表れる潜在能力を重視したのが画期的なポイントだった。星野監督は「いわば“数値で選んだ子”もいます。技術も数値も高い子は当然選出しましたが、仮に総合点が同じならば、技術の高い子よりも数値の高い子を選びました」と明かす。
「初めての試みなので、このやり方が正解だったとなるか、やはり野球の上手い子を選んだ方がよかったとなるかは、まだわかりません。(潜在能力重視で選出した子の)中学、高校での成長を見ることもできるので、楽しみです」と笑顔を浮かべる。
メンバー選出後の練習にも、科学的アプローチを導入。「ベースボール&スポーツクリニック」の豊田太郎氏を育成アドバイザーとして迎えた。ウオーミングアップのやり方から変わり、「成長の段階や特性、今後の伸びしろなどを分析してもらっています」と指揮官は明かす。選手個々のデータはプリントアウトし、保護者と共有しているという。

野球ノートを配布…事前の目標設定、活動後の振り返りを奨励
21回目となる「NPBジュニアトーナメント」は、今年からはオイシックス新潟、くふうハヤテ、ルートインBCリーグ、四国アイランドリーグの各ジュニアも正式に参加し、計16チームで頂点を争う。
念願の初優勝へのハードルはより高くはなったが、勝利や技術向上だけでなく「人としての成長」を重視するのが西武ジュニアの方針だ。「ここに選ばれている子たちはだいたい、所属チームでは下級生の頃からレギュラー。“バット引き”もベンチで声を張り上げることもしばらくやっていない子が多いです。そういったベンチワークを改めて経験しながら、代打やリリーフで途中から出場することの難しさなども、知ってもらえればいい」と星野監督は語る。
選手たちには、ルーズリーフの“野球ノート”を配布。活動日ごとに、事前に目標、活動後に振り返り(よかったこと、悪かったこと、次回へ向けて意識すべきことなど)を記入するよう奨励している。失敗から何を学んで次にどう生かすか。自分の考えを言葉にし、どう他人に伝えるか。そうした“非認知能力”と呼ばれる内面的な力を高める取り組みも、今年の西武ジュニアの特徴だ。
事前の準備と反省を綿密に行っているのは、監督・コーチ陣も同じ。星野監督は「月ごと、活動日ごとにテーマを設定し、達成できていれば次へ進み、できていなければもう1、2週頑張ろうとやってきました」と説明。「今年は監督・コーチ間のミーティングの時間は長く、内容も濃くなっています」とうなずいた。
今年のチームを「守備陣がいい」と評する指揮官。出場メンバー16人中6人が投手登録で、「各選手が複数ポジションを守れるように練習していて、投手ができる子は他にもいます」と編成に自信をほのめかす。
ジュニアチーム監督としても“ベテラン”の域に入った48歳は、「この仕事は楽しいし、面白いです。わずか4か月の活動期間でも成長を見せてくれます。結果的に勝てれば最高ですが、たとえ勝てなくても、子どもたちや保護者の方々に、ウチでよかったと言ってもらえるように取り組んでいます」。西武ジュニアでの活動を通して、「今後野球を続けていく上でのヒントをつかんでもらえたら」。そう目を細めた。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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