プロの登竜門で小6女子を“異例起用” 「勇気いる決断」も…元ドラ1が信頼を寄せたワケ

「立ち上がりは『やべ』」も…くふうハヤテJr.・原陽菜投手が示した対応力
NPB12球団などが小学生のジュニアチームを結成して日本一の座を争う「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」が26日、神宮球場と横浜スタジアムで開幕した。くふうハヤテベンチャーズ静岡ジュニアの原陽菜(はら・ひな)投手(6年=興津ドラゴンズ)は神宮球場で行われたオイシックス新潟ジュニア戦で、女子としては異例の“開幕投手”を務め、3回無失点の好投。チームも8-0で5回コールド勝ちを収めた。
21回目を迎えた「NPBジュニアトーナメント」は今大会から、くふうハヤテ、オイシックス新潟、四国アイランドリーグplus、ルートインBCリーグのジュニアチームも正式参加となり、計16チームで頂点を争う。
そんな中、くふうハヤテジュニアの中村勝監督(元日本ハム)は大事な予選リーグ初戦の先発を原さんに託した。「チーム結成後に一番成長した選手です。僕としても勇気のいる決断でしたが、期待以上にやってくれました。彼女にとって自信になったと思いますし、僕も使って良かったと思える試合でした」と大きくうなずいた。
中村監督自身もドラフト1位でプロ入りした現役時代、NPB通算63試合を投げ15勝をマークした右腕投手。原さんを「コントロールが良くて、ストライクゾーン内に投げながらクイックモーションや緩急も使える投手です。今日は立ち上がりに、気持ちがいっぱいいっぱいになり、リズムを崩しましたが、徐々に持ち直して打者と戦えるようになりました」と評する。
1イニングごとに1安打1四球ずつを許し、特に両チーム無得点で迎えた3回には、2死一、二塁のピンチに痛烈な当たりを放たれたが、味方野手の正面に飛ぶサードライナー。結局3イニングを投球数53、3安打3四球3奪三振の無失点で流れを呼び込んだ。原さんは「立ち上がりはボールが続いて『やべ』と思いましたが、守備の子たちが『大丈夫だよ』と声をかけてくれて、徐々に落ちついて投げることができました」とチームメートに感謝した。

小1で少年野球チームに入団…背番号「81」の理由とは
先発投手の粘りに応え、沈黙していた味方打線も4回に一挙8得点。最後は絵鳩理久(えばと・りく)捕手(6年)が左翼ポール際へ3ランを放ち、締めくくった。原さんは「(絵鳩くんは)キャッチャーとしてもワンバウンドの投球を止めてくれるので、頼もしいです」とうなずいた。
原さんは小1で静岡県清水区の少年野球チーム「興津ドラゴンズ」に入団。父は“サッカー派”だったが、ソフトボールの経験のある祖父と母の影響でプロ野球中継に興味を持ち、自らボールを握るようになったという。憧れの選手は、オリックスで通算204本塁打を放った「T-岡田さん」だそうで、渋い好みである。
興津ドラゴンズでも、くふうハヤテジュニアでも「81」という重い背番号を付けているのは、「誕生日が8月1日だから」。この日の神宮は何度も外野フェンスが倒れるほどの強風に見舞われたが、トレードマークのポニーテールを折ってキャップの内側に押し込んでいたのは、「風が強くて帽子が脱げそうになり集中できなかったので、髪を押し込んで脱げないようにした」と、難しいマウンド状況にも対応した。
「ハヤテジュニアに入ってから、肘を曲げずに大きく腕を振ることを教わって、成長できたと思います」と手応えを感じている。野球界では競技人口の減少が危惧されている中、増え続けている女子プレーヤーが鍵を握るだけに、この大会で自信を得て中学以降も野球を継続してほしいものだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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