「3人監督制」で3年間を“一貫指導” 基礎重視で台頭…人口減でも人気の強豪学童チーム

花谷少年野球部・武田均監督が語る「指導の一貫性」と選手の育成
少年野球の指導現場では、学年ごとに監督が代わる体制も少なくないが、選手の成長を長期的に見守るには課題も残る。兵庫の学童チーム「花谷少年野球部」は、卒業まで監督が交代しない3人監督制を導入。4年生から6年生までの3年間、同じ指導者が一貫して一人の選手と向き合うことで、個々の1年ごとの成長を確実に捉え、目標に向かって伴走する体制を整えている。
花谷少年野球部は2020年に「高円宮賜杯第40回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」兵庫大会で初優勝(コロナ禍のため本大会は中止)を飾るなど、強豪として知られている。活動する神戸市須磨区の人口は減少傾向が続く中、全学年計51人と安定した部員数をキープ。その理由は指導の一貫性にあるという。
4年生を指揮する武田均監督がこの体制で最も重視しているのは、将来を見据えたスケールの大きな選手育成。スクイズや軟式野球特有の“叩き”といった小技に頼らず、無死三塁の好機でも「打って返してほしい」と選手に期待を寄せる。勝つための戦術も重要だが、小学生の時期はしっかり投げてしっかり振るという基礎の部分を伸ばすことが、中学や高校での飛躍に繋がると考えている。
具体的な指導方針として、身体ができていない段階で最新の理論や高度な技術に走ることを戒めている。SNSの普及により、子どもたちは容易にプロが取り組む技術などの情報を得られる環境にある。しかし、武田監督は「しっかりとした基礎があるからこそ、技術が身につく」と説き、まずは癖のない投げ方や打ち方を習得させ、上のカテゴリーでアレンジできる余地を残すよう意識している。
指導者の役割は、完成された選手を作ることではなく、次のステージへ送り届けることにある。「小学生の指導で一番大切なのは土台作り」と断言する背景には、目先の1勝に固執して選手の可能性を狭めてはいけないという強い信念がある。組織的な野球や細かな技術は、身体も心も成長した中学・高校から学べば十分間に合うという考え方が、一貫した指導の根底に流れている。
もちろん、勝利から得られる経験も否定はしない。育成と勝利の両立は決して容易ではないが、強固な土台を築きながらも勝つ喜びを体験させる。この難しいバランスに挑み続けることが、指導者の本来の務めだという。3年間の月日をかけて一人の人間としての成長を支え続ける一貫性こそが、子どもたちの野球人生において最も価値のある財産となるはずだ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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