カウント3-0からの「待て」は正解か “3.6%”は「少なすぎ」…最優秀賞学生の指摘

3ボールから積極的に打つデータ上の利点とは(写真はイメージ)
3ボールから積極的に打つデータ上の利点とは(写真はイメージ)

野球データ分析競技会で最優秀賞…同志社大学・大学院が注目したカウント別打球速度

 カウント3ボールからは、待つより打った方が期待値が高い――。全日本野球協会が主催する「第5回野球データ分析競技会」の決勝プレゼンテーションが15日に都内で行われ、事前の審査を通過した6チームが登壇。「バットを鈍らせるものの正体 ~カウントが支配する打撃の質~」をテーマに発表した同志社大学・大学院チームが、最優秀賞に輝いた。

 今後の野球界を支える、データと指導現場をつなぐアナリストやデータサイエンティスト、コーディネーターの育成を目的とし、学生(高校、大学、大学院)が1〜3人1チームで、野球のトラッキングデータを与えられた時間内で分析。その発表内容を競うイベントで、今回で5年目を迎えた。

 同志社大学・大学院チームは、2024年のMLBのカウント別打球速度に注目。初球が142キロなのに対し、打者が0-2と追い込まれると139キロに低下し、逆に3-0と打者有利の状況では155キロと上昇している。そこで今回は最近5年間の社会人野球のカウント別打撃を分析し、「同じ傾向が見られました」と発表した。

 初球の打球速度が134.6キロだったのに対し、0-1では134.3キロで0-2では129.2キロに低下。一方で1-0では137.7キロ、2-0では139.3キロ、3-0だと147.4キロと明らかな増加傾向が見られた。ストライクカウントが進むたびに打球速度や角度が下がり、ボールカウントが進むと打球速度と角度が上がっているのである。

「ストライクカウントが進めば進むほど、打者は心理的に追い詰められて気持ちよく振れず、こういった結果になってしまうということが考えられます。ストライクカウントが進めば投手はストライクゾーンを効率的に使え、より厳しい球を投げられることから、打球速度や打球角度が低下する打撃に持ち込ませているという要素も考えられます」

 さらに検証を進め、カウント別の球種割合を分析。投手不利のカウント3-0、3-1、2-0、2-1では直球の割合が50%以上であるのに対し、投手有利のカウント0-2、1-2では変化球の割合が多くなっている。特にスプリットやチェンジアップなど落ちる系の変化球は、倍以上の違いが見られたという。

 投球コースについても、投手不利のカウントでは真ん中付近の甘いコースに投じられていることが多いと指摘。投手有利なカウントでは低めや高め、内外角に投げ分けられていることを図を使って解説した。

最優秀賞を受賞した同志社大学・大学院の久保幸平さん、小澤勇輝さん、横石一輝さん(左から)【写真:尾辻剛】
最優秀賞を受賞した同志社大学・大学院の久保幸平さん、小澤勇輝さん、横石一輝さん(左から)【写真:尾辻剛】

投手の負担軽減へ…「追い込んでからの無駄球の削減」も提案

 その結果から提言したのが「3ボールからの打撃」である。過去5年間の社会人野球でカウント3-0となった799回を検証。インプレーはわずか3.6%(29回)しかなかった。「ちょっと少なすぎるのではないか。球種は約8割が直球です。投球分布を見ると、ほぼド真ん中に来ています。打者は余裕のある心理状態の中、高確率で甘い直球が来るのに見逃しているケースが多いんです」。

 3-0の時は甘い球が来る確率が高く、最も打球速度が速いという結果から「3ボールから簡単に見逃して3-1にすることが必ずしもいいとは限らない。状況に合わせて判断することが大切」と提言した。「甘い球を打つことで長打や強い打球が増える。得点力が向上します。3ボールから振ってくるとプレッシャーを与えることで投手も安易にカウントを取れなくなって、結果的に四球も増えるのではないかと期待させる」。

 投手に対しては「苦しいカウントでも変化球でストライクを取れるように練習すること」と提案。「狙い球の絞り込みを阻害できる。打者に迷いを生じさせることができます」。さらに「追い込んでからの無駄球の削減」も提案。「追い込まれた打者はスイング出力が落ちて、甘い球でも打球速度が落ちる。外に大きく外す球を減らして、球数の節約や投手陣の負担が軽減される」と力を込めた。

 近年は多くのカテゴリーで球数制限が導入されている。無駄球の削減は肩や肘への負担の軽減にもつながるだけに、一考の余地がありそうである。

 大学院2年の久保幸平さんは、今回同様にファイナルまで進出した第2回と第3回の競技会に続いて3度目の出場。4月からコンサルティング会社でデータ分析の仕事に従事する予定で、統計科学研究室のメンバーである大学4年の横石一輝さん、同3年で野球部員の小澤勇輝さんとともに初の最優秀賞に輝き、笑みを浮かべた。

 野球部では内野手として活躍する小澤さんは「自分の感覚がデータにも表れている。そこが面白い」と充実の表情。今回の分析結果が自身のプレーに影響するか問われると、「やってみる価値はあるんじゃないかと思う。データでは3ボールから振らなすぎ。打者からするとメチャクチャ甘い球がくるので、振らせてほしい気持ちも少し込めました」と語った。

 カウント3-0から打つのは勇気がいる。四球が頭をよぎり、凡打したらもったいないという気持ちも起こる。場面によっては「待て」のサインが出ることもある。ただ、4球目が外れてストレートの四球になる確率は約30%だという。3割以上の打率を残す打者なら、本塁打を含む長打の期待値も含めれば打ちにいく価値は十分にある。3割以下の打者でも、甘い球であれば安打にできる確率は高い。打者が最も心理的に余裕があり、打球速度が速いのがカウント3-0の時なのだ。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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