得点力が変わる“目的の最適化” 生まれる「1.4差」…野球素人が「1000試合分析」で証明

「第5回野球データ分析競技会」…数学の理論を用いた熊本大が優秀賞
数学の理論を用いて、目的意識の重要さを証明した。全日本野球協会が主催する「第5回野球データ分析競技会」の決勝プレゼンテーションが15日に都内で行われ、事前の審査を通過した6チームが参加。「数理モデル×シミュレーションによるチーム力向上分析 〜マルコフ過程を用いて〜」をテーマに発表した熊本大学チームが、優秀賞に輝いた。
今後の野球界を支える、データと指導現場をつなぐアナリストやデータサイエンティスト、コーディネーターの育成を目的とし、学生(高校、大学、大学院)が1〜3人1チームで、野球のトラッキングデータを与えられた時間内で分析。その発表内容を競うイベントは、今回で5年目を迎えた。
工学部の機械数理工学科に在籍する3人での挑戦。普段は「ざっくり言うと数学を使って現代の課題を解決しようとしています」という。直前に行われた「カウント3-0から積極的に打ってもいい」という同志社大学・大学院チームの分析を引き合いに、「3人とも野球経験と知識がないので、先ほどの“3ボールナッシング”という言葉は初めて聞きました。ビックリしたんです」と話して会場の笑いを誘った。
「野球の知識も経験もないがゆえに、野球のことをフラットに見られる利点があると思います」と説明して発表に移行。投手を1:奪三振タイプ(高い平均球速、高い空振り率、高い奪三振率)、2:球種重視タイプ(球速は遅め、低い四死球率)、3:バランスタイプ(球速は速め、中程度の奪三振率、中程度の空振り率)の3つに分類した。
打者は1:慎重派タイプ(低いスイング率、高い選球眼)、2:コンタクトタイプ(高いコンタクト率)、3:バランスタイプ(高い打球速度、選球眼重視)、4:積極派タイプ(高いスイング率、初球から振る確率が高い)の4つに分類。この投手と打者の対戦をシミュレーションした。地元の社会人野球チーム「Honda熊本」をモデルケースに無死一塁、1死二塁などの状況によって、どのような結果が出ているかを探った。

目的意識をバント、コンタクト、強振、選球眼に分類
これらを踏まえて、打者の目的意識を1:バント、2:コンタクト、3:強振、4:選球眼の4パターンに分けて分析。例えば無死一塁だとバントならどんな結果になるのか、強振だとどんな結果が多いのかをチェックする。さまざまなケースを検証し、どの状況だと、どれだけ得点につながるのかを数値化していった。当然、アウトカウントが少ない方が、得点の確率は上がっている。
コンタクトを意識する方がいいのか、選球眼を重視する方がいいのか、状況によって考え方は異なる。そんな中、目的意識の最適化を図ることで、どれだけ得点の期待値が上がるのかを分析。1000試合分をシミュレーションすると、あくまで数字上ではあるが、最適化前は1試合平均2.97点だったものが、最適化後は4.42点と1.4点以上も向上する結果となった。
“野球素人”を公言した割には投手や打者のタイプを細かく分類するなど、芸の細かさもあって優秀賞を受賞。時間的な制限もあり、細かい数値までは出せない部分があり、点差を含めた試合展開なども加味されていないものの「打者の目的意識を変えるだけでも、1点以上の得点力向上が見込めるのが面白いところだと思います」と総括した。
実際の試合では、数字では表せない場面に直面することもあるだろう。それでも、その場面に適した戦術、攻撃方法は必ず存在する。バントか、選球眼か、コンタクトか、フルスイングか――。選手も指導者も、そこの見極め次第で得点力に大きな差が出るのである
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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