球数制限だけでは防げない少年野球の肘障害 指導者が陥る“一律管理”の落とし穴

球数制限の導入で見落とされる“個人差”の問題点
少年野球や中学野球の現場で、球数制限の導入が進んでいる。肩や肘の故障を防ぐための重要な取り組みだが、球数という「数」だけで、本当に負担を管理できているのかは別の話だ。同じ1球でも、肘にかかる負荷は選手によって大きく異なる。見えにくいその差にどう向き合うかが、成長期の選手を守るうえで、次の課題になりつつある。
問題のひとつは、1球あたりの肘への負担が、選手ごとに異なる点だ。比較的負担の少ないフォームで投げる選手は、ある程度の球数を投げても肘への影響は抑えられる。一方で、体に無理のかかるフォームの場合、少ない球数でも肘に大きなストレスがかかっていることがある。
そのため、一律の球数制限だけでは、負担の大きい選手を見逃してしまう可能性がある。逆に、負担の少ない選手にとっては、必要以上に投球機会を制限してしまうケースも出てくる。
こうした課題に対し、米国の野球トレーニング施設「ドライブライン」では、球数とは別の視点からの管理を行っている。データをもとに、選手一人ひとりの体への負担を把握する取り組みだ。
担当者は「球数だけでは、適切な負荷管理は難しい」と話す。「肘にかかるストレスを投球ごとに把握し、その日の状態に合わせて練習内容を調整することが大切になります」と強調した。
肘の角度とストレスを可視化する計測技術
ドライブラインでは、肘に装着する小型センサー「パルス」を使用している。投球ごとの肘へのストレスや腕の回転速度、肘の角度などを計測できる機器だ。ドジャース・大谷翔平投手が活用していることでも知られる。
特徴的なのは、変化球への対応。中学生になると変化球が解禁されるが、その際にフォームが崩れ、肘への負担が急激に増えるケースは少なくない。パルスでは、複数の投球フォームを並べて比較することができ、球種による違いを確認しやすい。
「データと映像を一緒に見ることで、自分の変化に気づきやすくなります」と担当者は明かす。数値を通じて、自分の投球を客観的に見ることがフォーム修正につながるという。
価格は安価とは言えず、チーム単位での共有使用が想定されている。アプリは無料で、1台を複数人で運用できる点も特徴だ。「きれいなフォームや適切な動きを、無理のない形で身につけていく。そのための目安として使ってもらえれば」と担当者は説明する。
もちろん、機器がなければ選手を守れないわけではない。ただ、成長期の選手を預かる指導者や保護者にとって、球数だけに頼らず、一人ひとりの体への負担の違いに目を向けることが、より重要になってきている。
(First-Pitch編集部)
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