西武・森脇亮介のリハビリ支えた阪神元ドラ1 1087日ぶり1軍登板までの“苦闘”…復活に繋がった助言

7月3日のオリックス戦で1087日ぶりの1軍登板を果たした西武・森脇亮介【写真提供:産経新聞社】7月3日のオリックス戦で1087日ぶりの1軍登板を果たした西武・森脇亮介【写真提供:産経新聞社】

森脇をサポートした榎田大樹ファーム投手コーチ兼リハビリ技術担当

 2023年に「右上腕動脈閉塞症」を患い、長いリハビリに耐えてきた西武・森脇亮介投手は今年7月3日のオリックス戦(ほっともっとフィールド神戸)で1087日ぶりの1軍登板を果たした。今季は24登板で2勝2敗8ホールド、防御率2.91の好成績をマーク。復活の背景には、かつて阪神、西武で左腕投手として活躍した榎田大樹ファーム投手コーチ兼リハビリ技術担当の尽力があった。

 森脇は埼玉県所沢市のライオンズトレーニングセンターで行われている所沢秋季キャンプに参加中。5日、ブルペンで投げ込む右腕の傍らに榎田コーチの姿があった。「リハビリ期間中ずっと見守っていただき、アドバイスをたくさんいただきました。支配下に戻ってからもお世話になっています」とうなずく。

 2020年から3年連続で40試合以上に登板し、中継ぎとして大車輪の働きを続けてきた森脇は2023年の夏に突然右腕が上がらなくなり、8月に「上腕動脈パッチ形成術」を受けた。同年オフにいったん戦力外通告を受け、育成選手として契約を結び直して長い闘病生活に入った。

 2024年7月に2軍戦で実戦復帰。2025年にはファームで14試合に登板し、0勝2敗、防御率3.31の成績を残したが、ストレートの球威がなかなか戻らないことに大きな不安を抱いていた。

 榎田コーチは「大きな怪我をした選手は、本能的に怪我をする以前の形に戻したいと考えるものです。森脇もそうでした。しかし、怪我を経た体はそれ以前とは変わり、思うように動かせなくなります。『過去の自分の投げ方に固執し過ぎず、今の体に合わせた動きを探した方がいいのではないか』と考え、2022年限りで現役を引退しバイオメカニクス担当になっていた武隈(祥太氏=現ヘッドパフォーマンスアナリスト)も一緒になって話し合いながら、あれこれ試しました」と語る。

榎田大樹ファーム投手コーチ(左)が森脇をサポートしてきた【写真:宮脇広久】
榎田大樹ファーム投手コーチ(左)が森脇をサポートしてきた【写真:宮脇広久】

「来年は違うフォームに変わっているかもしれない」

 故障前には、独特の変則的なフォームで投げていた。左足を高く上げた後、テークバックに移る際に脱力して棒立ちになり、そこから急加速して腕を振った。手術後の体に合う新たなフォームを模索する中で、極端な形で投げてみたこともあった。榎田コーチが振り返る。

「トルネード投法です。森脇が野茂英雄さんやウチの栗山(巧)選手と同じパーソナルトレーナー(大川達也氏)に指導を受けていたこともあって、野茂さんの投げ方を真似してみたらどうかと思いつきました。しかも、やってみたら意外にスピードが出たのです」

 上半身を大きくねじり、打者に背中を見せてから投球する「トルネード投法」は、日米通算201勝を挙げた野茂氏の“代名詞”だが、習得の難易度が高く、真似する投手はなかなか現れない。

 森脇が本格的にトルネード投法を採用するには至らなかったが、手術後の体の動きを模索する中でヒントになった。今年6月に支配下登録を勝ち取り、1軍に戻った時にはスムーズに体重移動を行う比較的ノーマルな投球フォームになっていた。今季のストレートの平均球速は145.3キロで、手術前より速くなった(過去の最速は2021年の145.0キロ)。

 今季許した被本塁打は「1」。9月25日のロッテ戦(ベルーナドーム)で1点リードの8回に登板し、西川史礁外野手に逆転3ランを浴びた。3球続けたカットボールをバックスクリーン左へ運ばれた。

 榎田コーチは「カットボールは手術前に比べると、スライダー気味になっていて、おそらく自分が思っているより軌道が大きく膨らんでいると思います。それが悪いとは言いませんが、精度を上げ、自分が思っている通りのボールを投げられることは大事だと思います」と指摘する。

 森脇は「今の目標は、今年投げてきた球種の精度を上げることです。一番はやはり真っすぐ。真っすぐがあってこその変化球だと思うので、重要視しているところではあります」とした上で、「今の自分の体で一番投げやすく、しっかり投げられるフォームを追究しています。来年は、手術前のような形になるかもしれないし、今年と同じになるかもしれないし、全然違うフォームに変わっているかもしれません。まだ何とも言えないですね」と笑う。

西武の投手陣では最年長の34歳。榎田コーチへの感謝は忘れない【写真:加治屋友輝】西武の投手陣では最年長の34歳。榎田コーチへの感謝は忘れない【写真:加治屋友輝】

「僕の野球人生も故障がちでした」…ライナー直撃で粉砕骨折も

 榎田コーチは2010年ドラフト1位で東京ガスから阪神入り。1年目から中継ぎで62試合に登板し、防御率2.27と活躍した。岡本洋介投手とのトレードで西武へ移籍した2018年、先発で自己最多の11勝(4敗、防御率3.32)をマーク。通算237登板で29勝25敗60ホールド3セーブ、防御率4.16の実績を残し、2021年限りで現役引退した。チームに残ってバイオメカニクス担当を2年間務めた後、2024年から現職で選手をサポートする。

「リハビリは地道な作業なので、選手は結構ストレスをため込みます。そこでうまく会話をしながら、我慢すべきところでは我慢してもらうように心がけています。自分が付き添った選手が1軍で投げてくれたら、うれしいです」と穏やかな笑みを浮かべる。

「僕自身の野球人生も、故障がちでした。阪神時代に左肘のクリーニング手術を受けましたし、西武でも現役最後の年(2021年)に、ピッチャーライナーが利き手の左手親指を直撃し粉砕骨折しました。そういう話を、選手たちにすることもあります」と付け加えた。

 そんな榎田コーチについて、森脇は「僕は現役時代の榎田さんともプレーしています。先発の榎田さんの後に2番手で登板して、榎田さんが出した走者を還さずに失点を阻止したこともあるんですよ」といたずらっぽく笑う。西武の投手陣では最年長の34歳となった右腕が、リハビリ生活を支えてもらった恩を忘れることはない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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