西武・澤田遥斗が「忘れたい」“夏の記憶” 田辺コーチが評価した成長…「酷いもの」から這い上がる両打ち野手の現在地

所沢秋季キャンプで練習に励む西武・澤田遥斗【写真:宮脇広久】所沢秋季キャンプで練習に励む西武・澤田遥斗【写真:宮脇広久】

今季2軍戦唯一の打席で中犠飛「初安打より初打点が先かよ」

 2024年、京都国際高が夏の甲子園で全国制覇を成し遂げた。当時の3年生で、同年のドラフトでプロ入りした唯一の選手が、西武の育成・澤田遥斗外野手だ。高校では2年生の秋から右打ちに専念していたが、元々スイッチヒッターで、プロ入り後は俊足を活かすため、再び両打ちに挑戦中。支配下登録を目指し汗を流している。

 埼玉県所沢市のライオンズトレーニングセンターで行われている所沢秋季キャンプ。澤田は主に田辺徳雄3軍野手コーチのマンツーマン指導を受けながら、打撃練習に取り組んでいる。「田辺さんからは、右打席では(ソフトバンクの)正木(智也)を目指せ、左打席では柳田(悠岐)で行け、フルスイングしていけ、と言われています」と額の汗を拭う。

「大は小を兼ねる、というか、まず強く振ることから始めて、そこからコンパクトさを覚えていけばいいと言われています。これまでの自分は、フルスイングができていませんでした。意識していなかったのですが、もっと振れ、もっと振れと言われて、実際に振ってみて『(フルスイングとは)こういう感じなのか』と思っているところです」と説明。高校時代は「長打を狙わずヒットでつないでいくチームで、僕もホームランとかは狙っていませんでした」と振り返った。

 育成ドラフト5位で西武に入団。プロ2年目の今季、3軍で実戦経験を積んだが、2軍での出場は2試合のみで、打席は「1」にとどまった。ただ、その1打席(途中出場した7月20日のオイシックス戦)で中犠飛を打ち上げ、1打点を記録。「周りから『初安打より初打点が先かよ』と言われました」と苦笑するところに、勝負強さが垣間見えた。

 田辺コーチは「入団してきた頃は、左打席でしばらく打っていなかったこともあって、酷いものだった。それに比べれば成長している」と評価し、澤田に期待する“未来”を明かした。

「足が速いし、選球眼もいい。まずは代走、守備固めで出場機会をつかみ、そこから支配下登録、レギュラーを目指していってほしいタイプの選手だね」と、田辺コーチは背中を押した。

「野球人生で泣いたのは2回だけ」サヨナラ勝利でつかんだ選抜出場

京都国際時代の澤田遥斗【写真:加治屋友輝】京都国際時代の澤田遥斗【写真:加治屋友輝】

 高校時代の同学年である中崎琉生投手(国学院大)、藤本陽毅内野手(中大)、1学年下の西村一毅投手(中大)らとは、同じ首都圏に住む仲間として数か月に1度、会食している。良くも悪くも“全国優勝メンバー”の肩書きが付いて回り、「野球をやる上では忘れたいというか、意識したくないところです」と本音を明かした。

「当時のチームメートもみんな、何をするにしても“全国優勝メンバー”と言われるのは嬉しくないようです。僕も、昔は昔、今は今と考えていますし、今後も野球をやっていく中で『昔はよかった』なんていう風には絶対に思いたくないです」と吐露する。

 そんな澤田は北海道札幌市出身で、中学まで北の大地で育った。「中学3年の時、夏の甲子園のベスト4が全て近畿の高校だったこともあって、やるならレベルの高い近畿でやりたいと考えました。将来プロになりたかったので、近畿で落ちこぼれるなら、そこまでの選手だったと諦めがつく。自分の力量を試したいと思っていたところ、京都国際から誘いをいただきました」

 高校時代の一番の思い出は何かと聞くと、全国制覇ではないという。「1学年上の先輩たちの代が春・夏とも甲子園に行けず、僕らの代になった時には、監督から『史上最低世代』と言われました」と回想する。

 新チーム結成後、秋の京都大会では決勝で京都外大西に敗れた。しかし、京都2位で出場した近畿大会を勝ち上がり、準々決勝で近江(滋賀)に1-0でサヨナラ勝ちし、翌春の選抜大会出場が確定的となった。「弱い、弱いと言われてきただけに、サヨナラで勝ったあと、チームメートとロッカールームでうれし泣きしました。野球人生で泣いたのは、それを含めて2回だけです」と目を細めるのだった。

プロのレベルの高さを痛感する日々「“足キャラ”で入ってきたのに…」

 もう1回の涙はいつかと聞くと、やはり、夏の甲子園決勝で延長10回の末に関東第一(東東京)を破り、全国制覇を果たした時であった。澤田は大会を通じ「3番・中堅」で出場し、打率.375(24打数9安打)と活躍した。「野球をやる上では忘れたい」と言いながらも、掛け替えのない青春の1ページで、誇りであることに変わりはない。

「ベンチに入れなかった控えの3年生が、ずっと僕らをサポートしてくれていて、彼らが泣きながら喜んでくれているのを見たら、僕も……。みんな、笑っているのに涙が止まらない状態でした」と振り返る。

全国制覇の誇りを胸にプロでも活躍を誓う【写真:宮脇広久】全国制覇の誇りを胸にプロでも活躍を誓う【写真:宮脇広久】

 今は、プロのレベルの高さを痛感させることも多い。「“足キャラ”で入ってきたのに……プロに入ってくる“足キャラ”はレベルが違います。小、中、高では足の速さで負けたことはありませんでしたが、同じ西武の育成でも、1歳下の新井(唯斗)の速さはやばい。オケムも速いです」

 それでも地道にバットを振り続ける。全国制覇メンバーの誇りを胸の奥に秘め、プロの世界でも這い上がってみせる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

CATEGORY