ファンと心を一つに― 本拠地で38回、ロッテ「勝利の名物儀式」誕生秘話
体調不良や試合でのミスの可能性…それでもブレない信念「全試合やる」
「続けてくれるという積極的な意見はありがたいし、大変嬉しい。大地(鈴木)が率先して行ってくれるという姿勢は助かる。ただ、それをシーズン途中で止められたり、今日はやらないという日があったりしては困る。時には大地が体調の悪い日もあるかもしれない。勝ったけれど、君自身はミスをしたり、チャンスの場面で凡退したりして出たくないようなこともあるかもしれない。それでもやってくれるのかな?」。
建設的な意見ではないが、それは事前にしっかりと意見を酌み交わさないといけない大事なことだった。長いシーズン、何が起こるか分からない。いい時もあれば、必ず悪い時もある。予期もしないマイナスな出来事も多数、発生するものだ。夏場は疲れがドッと出る。もしかすれば、率先して勝利の儀式を行う鈴木が試合に出られずにベンチを温める日があるかもしれない。それでも勝ったら、中心となって元気よくライトスタンドに行ってくれるのか。その覚悟を最初にハッキリと問う必要は確かにあった。
「もちろん、行きます。ファンの方に喜んでもらうために絶対にやります。昨年みたいな特定の何試合か限定ではなく、僕は全試合やります!」
キャプテンの心は固まっていた。ブレることが絶対にない強い信念に、会場にいた全員が圧された。こうして、本拠地マリンで勝利した試合では、選手たちが自分たちで人選をして、率先してライトゾーンまで走り、拡声器を手にしての勝利の儀式を行うことが決まった。過去のプロ野球の歴史を紐解いた時に前例が見当たらない、まったく新しいファンサービス。それは主将の強い決意から生まれた。