「あの時の栄光を覚えている」早実の女房役が語る、苦悩の斎藤佑樹への思い
背番号1に戻した元エース「斎藤も、あの時の栄光を覚えていると思うけど…」
「『ここで、こういうプレーがありましたよね』と聞かれても、思い出せなくなってきているんですよ。時々、当時の試合のDVDを見て思い出したりしています。今は、甲子園の優勝ありきの自分ではなくなっていますね。最初からそれを謳って社会人をやっているわけではないので、当然かもしれないですが…。あの夏の記憶が、自分から遠ざかっている感覚はあります」
今でも、早実野球部のOB会などで当時のメンバーと顔を合わせることがあるという。
「みんな変わらないですね。『また野球をやりたいな』と思いますよ。『駒大苫小牧と試合をやるか』という話題にはなりますけど、仕事が忙しかったり、転勤で地方にいたり、なかなか難かしいですね」
早実優勝ナインは、高校生の時と何も変わっていない。しかし、活躍の場は甲子園から社会に移り、それぞれが忙しい日々を送っている。その中で唯一、プロ野球選手として奮闘しているのが斎藤。1年目の2011年は6勝、翌2012年には5勝を挙げたが、2013年以降はわずか3勝と苦しんでいる。苦楽をともにしたエースには、特別な思いがある。
「斎藤も、あの時の栄光や調子が良かった時のピッチングフォームを覚えていると思うけど、それに戻すために練習しているわけではないと思うんです。今、与えられた場所で活躍をしなきゃいけない。体も変わってきているでしょうから、今のベストの状態に向けて取り組んでいると思います」
斎藤は今シーズン、背番号を「18」から早実時代の「1」に変更。投球フォームも当時のものに近づけている。甲子園の優勝から11年目となる今年、プロでの経験を積んだ新たな背番号1の姿を、かつての女房役も期待している。
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篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki